チビスターズ第二話 ②
軽いノックの音がした。
ベッドに身を横たえていたティエリアは起き上がり、黙ってドアを開けに行く。
開いた先……そこにいたのは、ロックオン・ストラトスだった。
「何か用ですか?」
「そうカリカリすんなって。休憩邪魔したのは悪いと思ってる」
睨みつけると、彼は苦笑した。
何でもお見通しというその余裕や物言いに若干、苛立ちを覚えたがすぐに納める。こんなバカバカしいとことをに腹を立てる必要はない。
代わりにため息を吐いて、ちらりとロックオンを見る。
「悪いと思っているのなら、始めからしないでください。……で?用事は何です?まさか、何もないのに来た、ということは無いですね?」
「あぁ、ちゃんと用事はあるさ。でなけりゃ、わざわざお前さんの機嫌を損ねるようなことはしない」
用事があるという、その言葉は信用できるだろう。いつも飄々としていてつかみ所が無く、言っていることが本当なのかも疑わしく思っている彼だが、こういうことに対しての嘘はつかないと知っている。これも、仲間としての付き合いの長さがあるからこそだ。
視線で話すように促すと、ロックオンは口を開いた。
「地上への同行人が決まったよ」
「スメラギ・李・ノリエガではなかったのですか?」
あと、クリスティナ・シエラも候補に挙がっていたのではなかったか。それから、フェルト・グレイスも。
「それが、ちょっと変わってな。お前らには教えておくべきだと思ったんだが」
その判断は、評価してもいいだろう。
確かに、それは先に知っておくべき情報だ。率先して伝えに来てくれた彼に、一応は感謝しておくべきかもしれない。
「誰なんです?」
「フェルトだけになったよ。ミッション中に人員が減るのはマズイだろうって話になってな。それで残りの二人は待機ってことになった」
「しかし、よくスメラギ・李・ノリエガたちが納得しましたね。今回のミッションは成功率も低くない、そんなに警戒するような物ではないはずでしたが」
だからこそ、彼女らがあんなことを言い出しても、ティエリアは全く反対しなかったのだ。
「ま、見た目が自分より小さい子供な二人が頼むんだからな……そりゃ、聞こうって気にもなるだろ。ところで、ティエリア……折り入って頼みがあるんだが」
「?」
少しだけ真剣そうなロックオンの様子に首をかしげる。何か、とても大切な事柄があっただろうか。覚えがないのだが。
「もしもフェルトがスカートなんて買おうとしたら、何としてでも止めやってくれないか?アレルヤと、刹那のために」
……何だ、そんなことか。
呆れにも近い感情を抱き、しかし彼の懸念ももっともだと思い直す。なんといっても今現在、アレルヤと刹那が女性クルーたちの手によって、スカートをはかされているという事実は、変わることはないのだから。だから、これから同じことが起こらないとは言い切ることができない。
端から見るのには、おもしろいと思えなくもないが……本人たちにとっては、死活問題だろう。大げさな話でなく。
「……善処はしてみましょう」
だからといって、きちんと止めることができるかとは別問題だ、これは。フェルトがどういう行動に出るかは予想しにくいが、下手をするとこちらも巻き込まれるおそれが無いわけではない。
そこら辺はロックオンも分かっているらしく、ただ、笑って「頼んだぜ」と言った。
「ところで、ハレルヤの所にも言いに行くのですか?」
「あぁ、もう言ってきた」
「彼は何と?」
「当たり前だろ、何としてでも避ける。って言われたな」
「なるほど…巻き込まれるリスクも省みず、か?さすがだな……負けてはいられない、か」
「何か言ったか?」
「いえ。何でも」
ロックオンはお兄ちゃんだから…きっと、皆のことをしっかりと気にしてくれるよ…ね?