怪談と友と夏の夜(デスサイズ+キュリオス)
みなさんこんにちは、もしくは初めまして。
ボクはキュリオスって言います。『それ・びー』の一員です。
突然ですが、ボク今いろいろ危険な状況にいたりします。
「……で、その扉を開けた先に…………」
「…デュナメス」
「……どうした?キュリオス」
「ボク達……何でこんな所いるの……?」
ボク達は今……いわゆる、〈百物語〉をしに来ていたのです……
怪談と友と夏の夜
キッカケは、ここの大御所的存在でもあるガンダムさんだった。
ボク達は紛争撲滅のためにここに来た。だけど、ここでは紛争なんて空気は全く無くて。
それで初めて来たときも、ボク達の勘違いから迷惑を掛けてしまっていた。
…ガンダムさん曰く、「エクシアと比べれば全然気にしてない」との事だったけど…それからボクは少し皆さんに後ろめたく感じていたのだ。
元々のボクの性格――極度の気弱さからでもあったんだけど、それを見かねたデュナメスがガンダムさんに相談してくれたらしい。
……ここまではいい。それだけならボクはデュナメスとガンダムさんにとても感謝している。
…だけど。
この続きを、ボクは納得しなかった。
(何で……『友好関係を築く』と『百物語』がイコールで結びつくんだろう……)
心の中で呟いた言葉は誰にも聞かれることなく、そして今現在。
ボクは用意された部屋の中央で、集まった皆さんと一緒に輪になって座っていた。
(ああ、早く帰って電気の着いた部屋で寝たいなぁ……)
※
先ほどから震えが止まっていないような気がするのは気のせいだろうか。
ガンダム主催、題して『第二回・キャラ総勢百物語大会 ~涼しい一夜を貴方に~』(なんてサブタイトルだ)に、(何故か)主催者から懇願されて出席したデスサイズは、自分の隣に座る新人をふと見る。と、彼は顔を真っ青にしながら必死に恐怖と戦っているように見えた。
確か、キュリオスと言ったか。何となく雰囲気がサンドロックと似ている気がする。何となく仲が良くなりそうな二人である。
それはさておき。
震えや表情から、キュリオスが本気で怖がっていると察知したデスサイズ。
一応自分達は彼等の先輩という立場なのだから、此処で変なトラウマが芽生えてしまったら其れはあまりにも可愛そうな気がする。
……そしてその感情はどうしてエクシアやヴァーチェには抱くことがないのだろうか。デュナメスは別として。(だって彼は自分よりは年上だから)おそらく自分の中であの二人は大丈夫だろうという予想が(しかもかなり確信に近い)あるのだろう。デスサイズはそう思うことにした。
だが、生憎この百物語は始まったばかりだ。つまり、怖くなるのはこれからということ。そして、おそらく自身もキュリオスの恐怖を倍増させかねない人物の一人でもあり。そんな自分がキュリオスに声を掛けるのも憚れるというもの。
(……声掛けるべきじゃないよなぁ…)
此処で、ふと疑問に思うことがある。
何故、わざわざガンダムは自分に出席を懇願したのだろう。
以前した時の事を忘れたわけではないだろうに。自分の話した怪談で全員が気絶したという、衝撃的な事実をあの人が忘れることなんてあり得ない。――否、忘れたくても忘れる事なんて出来ない、の方が正しいか。
何せ、自分の他に怪談を得意とする『あの』GP-01までもがいつの間にか気絶していたというのだから。
そんな『前科持ち』の自分をわざわざ呼ぶなど……何か、魂胆があるのだろうか?
そう思いながらそーっとガンダムの顔を向く。そして――愕然とした。
「――!?」
最早呪怨にも等しいだろうガンダムの視線。それはただ一点に。――そう、エクシアに。
エクシアは気付いてないのか、気付かぬ振りをしたいのか。だがカタカタと確かに震えているのが分かる。
(お、おいウイング!!なんだあのガンダムさん!!)
小声で自分のもう片方の隣に座っていたウイングに話しかけると、ウイングは呆れと怯えが入り混ざったような表情で答える。
(…どうやらこの場でアイツに一回恐ろしい目に遭わせておいてやりたいんだと)
もうそれはそれは涼やかな表情で「オレ達が先輩だってコト、ちゃぁーんと教えてやらないとだよね☆」と言っていたらしい。
(黒ッ……!!黒いよガンダムさんッ……!!!)
(だからオマエを呼んだんだろうな…)
疑問、全て解決。
ガンダムの魂胆が分かってしまったデスサイズは、若干気落ちしながら自分の順番を待っていた。
(出来ることなら帰りたい……)
一方、キュリオスは自分の我慢の限界を感じ始めていた。
こうやって座っているだけで耳に入ってくる数々の怪談。そして消えていく蝋燭。
それに釣れて、自分の中の恐怖ケージが満たされていく。満タンになってしまったら、恐らく『裏の』人格が出てしまうだろう。
それだけは絶対に避けたい。周りの人達のためにも、自分自身のためにも。
そうしたらまたみんなに迷惑がかかるだろう。せっかくガンダムが自分のために計画してくれたことなのに。それじゃあ無限ループになってしまう。それだけは絶対に嫌だ。
「……キュリオス?」
いっそのこと耳を塞ぐのはどうだろうか。いや、それでは聴覚は消えても視覚は消えない。消えていく蝋燭が目に入る。じゃあ目を塞げばいいという話だが、それは何か嫌だ。
完璧なる暗闇に身を置くことになる。それじゃあ自分で恐怖ケージを溜めることになるだろう。
「…キュリオス!」
…ダメだ、思考回路が混乱してきた。あれ、此処って冷房無かったんだよね…ああ、怪談で涼しくなるからって要らなかったんだよね、でも暑いや…気のせいか声もあんまり聞こえないし…あれ、視界がゆがんで……
その瞬間、キュリオスの視界はブラックアウトした。
バタッ
「キュ、キュリオス――――!!!!??」
「し、しっかりして下さいキュリオスさぁんっ!!!!」
頭から煙を出しながらキュリオスは――その場に俯せに倒れた。
※
「う……」
軽く身じろぎをして意識を浮上させると、額の冷たい感覚がハッキリした。続いて、目に入る天井。
「あ、気がつきましたかー?」
そして視界に入ってくる蒼いMSの少女と――黒い、MSの少年。
「ぁ、あれ…?」
「しばらく休んでて下さい。じゃあデスサイズさん、何かあったら知らせて下さいね」
「おう!じゃあ後でなアレックスちゃん」
デスサイズがそう言うと、アレックスは一礼してその部屋を去る。
キュリオスが、自分が布団に寝かされていると気付いたのはその時だった。
「あれ……ボク…」
「いきなり倒れたんだよ。いやーびっくりしたぞ?」
そうからからと笑うデスサイズに、キュリオスは「あれ?」と感じる。本日何度目の『あれ』だろう。
何故に――この人が?
あの状況だったら、たとえ同じ隣でもデュナメスが此処には居そうなのに。
思わずキュリオスはその疑問を口に出す。
「何であなたが……?」
「え?……ああ、――利害の一致?」
「…は?」
利害の一致?なんだそれは。瞬く間にキュリオスの頭の中には?マークが広がっていく。
対するデスサイズは、心の中で苦笑しつつ口には出さずに思う。
(『キミの仲間を怖がらせるため』にあそこにいたなーんて……言える訳無いじゃん)
寧ろお断りだそんなの。
そんなデスサイズの心の声など知らず、キュリオスはおずおずと口を開く。
「あの…ボク、戻りたくないんですが……」
あの部屋にいるより寧ろこちらにいた方が数倍マシだ。
デスサイズも笑いながら「うんうん」と頷く。
「オレも戻りたくないんだよなー。(ちょっとした事情で)だからアンタの付き添い買って出たんだけど」
ああ。と、キュリオスは納得した。だから『利害の一致』。
「じゃあなんだし、オレがこの世界のこととかいろいろ教えてやろっか?」
流石に暇なので。
それはキュリオスにとってもありがたい申し出だった。
この人だったら仲良くなれそうだ。面倒見がよさげだし。何となくデュナメスとも仲良く出来そうな気がする。
「ぁ……じゃ、じゃあお願いします……」
夏虫の合唱が鳴る中
一つ友情が誕生した。
*おまけ*
(…うまいこと逃げたなデスサイズ……)
未だ戻ってこないデスサイズの行方を想像しつつ、ウイングは皆の話す怪談に耳を傾けていた。
(さて…アイツ、デスサイズが居ない状態でどうするつもりだ?)
勿論ガンダムのことである。
ガンダムの『打倒エクシア作戦』(ウイングが勝手に命名した)にはデスサイズの協力が必要不可欠のはず。さて、ガンダムはどうするのだろう。
どうせ諦めてるだろ……と、ウイングがチラッとガンダムを見ると。
(……)
彼は相変わらずの射抜く呪怨の如く視線でエクシアを見ていた。
(アイツ…何をするつもりだ!?)
あの表情のガンダムを見れば、彼がこの作戦を未だ諦めていないことなど安易に想像できた。
そして――これこそ、恐らくガンダムの最終兵器。
「じゃ、今度はオレですねー?」
「うん!頼むよ――GP-01!!」
どっかの爽やか好青年のつもりかオマエ。
親指まで立てて、最高にイイ笑顔で放つガンダムの言葉は――最早勝利宣言に等しい。
自分達は免疫があるからいいものの……彼には、ただ『ご愁傷様』というしかない。
ウイングはそっと、二人が抜けたせいで隣席となっていたデュナメスに耳打ちする。
「…覚悟しておけ」
「…ああ」
その後、01の怪談を聞き終わったエクシアがばったりと気絶し、ガンダムが心からの笑みを浮かべていたことは言うまでもない。
本当にありがとうございました!可愛すぎるのですよ!
そして大御所が黒すぎる…GP-01より黒いんじゃ………素敵ですけど。
ていうか…こちらの相互品が遅くて申し訳ないです…今暫く、お待ちを。