~長谷部は鬼役~
「いたぞ、長谷部だ!」
「畑の方に走ってったぞー! 追いかけろー!」
「僕らは反対側から回り込みましょう」
「挟み撃ちですね、分かりました!」
明石「……長谷部はん、まだ逃げ回っとりますの。いい加減捕まってもえぇんとちゃいますか?」
一期「長谷部殿は真面目な方ですからな……主から頼まれたということもありますし、はりきっておられるのでしょう」
明石「けどなぁ、今回の主役は短刀やろうに……大人げないわぁ」
江雪「手を抜くという言葉を、知らない方ですから……」
宗三「夕餉までに終わってくれればいいんですけどね」
薬研「まぁ、そう時間の経たないうちに決着がつくと思うぜ。弟たちも頑張ってるしな」
次郎「確かにねぇ。なんだっけ、鬼を全員仕留めたらご褒美があるんだっけ?」
一期「えぇ。既に、厨の方に準備して置いてあるようです」
明石「厨、てーことは、食べ物なんやな」
江雪「そうらしいですね……実物を見たわけではないですが、そう、聞きましたよ」
薬研「ま、最初っから何がご褒美か分かってちゃ、面白くないってことだろ」
宗三「そんなものですかね。しかし……」
「長谷部捕まえて金一封獲得ばい!」
宗三「……彼、あんなこと言ってますよ?」
一期「……まぁ、大丈夫でしょう」
次郎「ていうかさぁ、さっきから気になってたんだけど……薬研、アンタ、何でこっち側にいるんだい?」
江雪「確かに……。ここは、打ち取られた鬼役のたまり場、なのですが」
宗三「短刀がいるには不自然ですね、そういえば」
薬研「いやなに、俺っちも鬼役やってただけって話だ。気付かなかったか?」
明石「最初に鬼役と短刀で集まった時に、おったのは覚えとりますけど……いや、鬼役しに来たとは思いませんわ」
~厨=大豆補給所~
「歌仙さーん、投げる豆が無くなっちゃったー!」
「あ、あの、僕もです……」
「おやおや、最後の鬼は手強いみたいだね。さっきの補給じゃ足りなかったかい?」
「ぜんぜんです! ですから、こんかいは、さっきの2ばいはもらいます!」
「それで足りるかも怪しいけどね……」
燭台切「短刀君たちも頑張ってるね。ご褒美のこともあるし、是非とも最後の鬼も打倒してほしいな」
鶴丸「あー、あるって言ってたな、ご褒美。君はご褒美が何か知ってるのか?」
燭台切「まぁね。厨によく出入りするメンバーなら知ってると思うよ。倶利伽羅も知ってるよね」
倶利伽羅「……買い出しにつき合わされたからな」
鶴丸「なるほどな。つまり、俺たち三人の中で、ご褒美の正体を知らないのは俺だけってことか」
燭台切「知りたい?」
鶴丸「いーや。後で、短刀たちと一緒に見に来ることにするさ。そっちの方が乙だろ?」
燭台切「同感だよ。……さて、短刀君たちがご褒美を取りに来るまで、恵方巻作り、引き続き頑張ろうか」
倶利伽羅「……光忠」
燭台切「何だい?」
倶利伽羅「今更だが敢えて訊く。本丸の刀剣全員分の恵方巻をどうして四人で作ろうと思った?」
鶴丸「歌仙が投擲用の豆の補充係になってるから、実質三人だよな……」
燭台切「大丈夫、夕餉には間に合うように計画立ててるから」
倶利伽羅「俺が聞いているのはそこじゃない」
鶴丸「……やれやれ」
~年の数だけ~
「蛍! なぁ、悪いんだけど望月貸してくれ!」
「特上軽騎兵二つ付けて多分馬も持っとる長谷部の打倒には、もうそれ以外方法が無いけん!」
「え、あれ、知らない? 望月なら長谷部に貸してるよ」
「想像より速いし手強いと思ってたらそういうことかよ! 容赦ないなあのひと!」
「えっと、なら、小雲雀、小雲雀は!?」
「んーっと……あ。あれは、今、石切丸が使ってたと思う」
「じゃあ、えぇと、石切丸さんのところに行って……」
「……あの、石切丸さんは今日は出陣されていたと思うのですが」
「となると、あとは花柑子だけですね……それ以外だと、博多が長谷部さんに追いつけません」
「花柑子なら、今朝は厩にいたよ。当番で見た」
「いそぎましょう! だれかにとられるまえに、かくほです!」
髭切「いやぁ、みんな元気だねぇ。良いことだよ。うんうん。……ねぇ、弟、豆は何個食べれた?」
膝丸「膝丸だ、兄者。……そうだな、二百はどうにか食べたな」
髭切「おぉ、凄いね、僕はまだ五十だよ。これだけ全部食べて、夕餉はちゃんと入るかな?」
膝丸「怪しいだろうな……」
髭切「だよねぇ」
膝丸「……兄者。兄者は豆まきに参加せずとも良いのか?」
髭切「なんで?」
膝丸「鬼と言えば兄者だろう」
髭切「いやいや、僕が行ったら、鬼を追い払うどころじゃなくなってしまうからね」
膝丸「……それもそうだな。鬼として走る者たちの腕を切り落としては大惨事だ」
髭切「でしょう? だから、今日は大人しく豆を食べているよ」
~いくさのあと~
加州「……で? 短刀たちは豆まき頑張りすぎて、バタンキュー、ってこと?」
大和守「みたい。疲れてぐっすり寝入っちゃってて、今すぐには起きないんじゃないかってさ」
加州「あんだけ全力で走り回ったらそうなるか。このまま寝かしてやってても良いけど……そんなことしたら怒られるよね」
大和守「だろうね。恵方巻食べるのも楽しみにしてたみたいだし、何で起こしてくれなかったんだーって言われること間違いなしだよ」
加州「ま、そのあたりは一期が良いようにするでしょ。……で、最後の鬼は?」
大和守「厨で黙々と恵方巻作りを手伝ってる。……あの顔は絶対、来年は捕まらないぞって決意してる顔だったよ」
加州「……主の頼みごとに一生懸命なのはわかるんだけどさー、もうちょいどうにかしない? って思うよね」
大和守「確かにね」
わが本丸には後藤君がいないので、鬼を追いかける短刀組に彼の姿はありません。
あと、なんか想定よりも長谷部の存在感が強くなった不思議。
みんな仲良くわいわい節分するのが一番だと思います。
ちなみに、ご褒美は恵方ロールです。