お題：銀 20.レースのカーテン

夢の物語、完結です。

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20．レースのカーテン



『起きろよアレルヤ。もう朝だぜ？』
「ん……あと十分ぐらい…」
　そう答えれば、無言と共に酷い頭痛が襲ってきた。
「痛っ……ハレルヤ、起きる！起きるから！」
『最初からそうしときゃ良いんだよ』
「うぅ……」
　まだ微かに痛む頭を抑えながら、アレルヤはゆっくりと起き上がった。
　部屋の中は既に朝の柔らかな光に満ちていた。閉めるのを忘れていた窓からは微かな風が吹き、レースのカーテンをヒラヒラと揺らせている。聞こえてくるのは小鳥の鳴き声、だろうか？
　今、アレルヤは都市から離れた留美の別荘の一つにいた。何故かというと簡単な話で、無理矢理ここに連れてこられ、しばらくの滞在を義務づけられていたからだ。理由は宇宙で働き過ぎだから。
　体が丈夫だからと、規定量より色々とやってしまったのがマズかったらしい。スメラギに諭され、ティエリアに怒られ、ロックオンに呆れられ、刹那に心配された。ハレルヤはいつもと変わらず、ただ『このくらいじゃ倒れねぇよ』と呟いていたが。
　ハレルヤを除く四者は四様の態度だったが、全員が自分のことを思ってくれているのは分かった。だから感謝している。
　のだが……。
「どうしてこんな森の中に……」
『休ませるのが目的だからだろ』
「いや、それはそうなんだろうけど」
　誰も来ないような自然の中にいる、というのは何というか。
　確かにマイナスイオン的な物はありそうだけども。
「落ち着かないなぁ…」
『ま、俺らだけじゃない分いいんじゃね？』
「そうかな……うん、そうだね」
『相手があの眼鏡っつーのが苛つくけど』
　そう、一緒に滞在しているのはティエリアだった。
　『あの』ティエリアが、自分から付いていくと言ったと聞いたときには……本当に驚いた。いつも地上は嫌いだと公言している彼が。
　来るとしたら彼だけだった、というのも事実ではある。こちらの諸々に関係空く、紛争という物は世界中で起こりえるのだ。刹那とロックオンはそちらの対応へと回ってるハズである。それをスメラギに伝えられたときの二人の残念そうな顔は、今でも忘れられない。
「けど、何で残念そうだったのかな？ハレルヤ分かる？」
『……なんかさ、いい加減アイツらが憐れに思えてきた』
「え？どうして？」
『…………分かんなくていい』
　半分脱力している様な彼の声に首をかしげ、しかし思考は中断された。
「起きたのか、アレルヤ・ハプティズム」
「ティエリア」
　部屋に、しばしの同居人が現れたのだ。
　微笑んで体を動かし、ベッドに腰掛ける。
　隣の空いたスペースを軽く叩けば、彼は少々躊躇ったものの素直に収まった。
「今日もここは平和だね」
「フン…どうであれ地上は……ん？」
　何に気づいたらしい彼の指が、右耳の上辺りに触れる。
　くすぐったくて身をよじったが、彼の指はそのままだ。
「えっと…何？」
「ここだけ妙に跳ねているな…」
「あぁ、それは…」
　夢の旅の副産物。
　そう詠うように言えば、彼は不思議そうな顔をした。
「夢の旅？」
「そ。眠ってる間はみんな、そう言うことをしたりするんだ」
　君には何か覚えはないの？
　そう笑いかければティエリアはしばしの沈黙の後、ポツリと呟いた。
「夢の中で、君に会った気がする」
「そう？……実は僕もなんだ」
　夢なので、起きてしまえば大方は忘れてしまう。出会った相手の顔というのはその最たるで、覚えていた事など全くない。自分の場合、片割れは除くのだが。
　だが、そうであってもこういう『何となく』の感覚は残る。
　だから……きっと、自分たちは夢の中で出会ったのだろう。
　他の二人のマイスターたちにも会えたのかな……そう思いながら、アレルヤは静かに瞳を閉じた。この静かな一時を享受するために。

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夢の終わりは現の始まり
現が終わりし頃にまた
あの場で共に会いましょう
虚ろの世界で会いましょう
それまでどうか　忘れずに
それでは再び会う日まで

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お題：黒 05.夜行バス

お題、四分の一ほど消化です。
嗚呼…少しずつ、二期の足音が近付いてくる…。

今回は交差点（クロスロード）姉弟の話。

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05．夜行バス



　とても、窓の外を流れる光の流れが不思議だった。
　それが『街の灯り』であることくらいは幼い僕でも分かったけど、それでも、何だか見慣れた光とは違うように思えて、とても珍しく思えて、ずっと、ずっと見ていた。
　隣に座っているのは姉さん。姉さんは何もせずにただ、バスの座席に座っているだけ。
　僕よりも年上の姉さんのこと、きっと、こういう経験も何回かしたことがあるんだと思い、ちょっとばかりの羨ましさを覚える。他にもたくさん、僕のしたことがない事をやっているんだとも考えついたから。
　夜のバスは空っぽだ。僕ら以外だったら運転手さんしかいない。
　そんなガラガラのバスの中、僕らは一緒に座っていた。
「姉さん、いつ……着く、かな」
「さぁね……まぁ、今日中には着くと思うけど」
「……眠いな」
　今でも充分遅い時刻なのに、その言い様だと今日か明日か分からないようで、家に着いたときに起きていられるかが少し心配だった。起きていないとバスから降りられなくて、帰るのも遅くなるかも知れないもの。
　そう言うと、姉さんはクスクス笑って口を開いた。
「じゃあ、眠ったらいいわ。着いたら私が起こしてあげるから」
「けど、姉さんは眠くないの？」
「まぁ…眠いけど、我慢できないほどじゃないわね」
「じゃあ、僕も我慢するよ」
　姉さんにだけ我慢をさせるわけにはいかない。
　僕はそう思って言ったのだけど、姉さんは呆れ半分、苦笑半分の表情を浮かべて僕の額をピンッ、とはじいた。
「子供は眠る時間でしょう？」
「子供って……姉さんも子供じゃないか」
「私は良いのよ、私は」
「何で？」
「だって姉だもの」
　良く分からない理由だったのに、何でか姉さんが自信満々に言う物だから……ついつい、僕も信じてしまった。姉さんが言うのならそうなんだろうって。
　実際はそういうことでなくて、姉さんの楽しそうな笑顔に押し切られた感じも…しなくは無いんだけど。
　けど、そういう話も僕の決意とは関係ない。
　引っ付きそうな瞼を何とか開いて、何度も何度も目をこすって睡魔をやり過ごそうとするのだけど、どうしても……完全に出て行ってくれなかった。
「沙慈……アンタ、いい加減に寝ちゃいなさい」
「けど…」
「私まで寝たら、着いたときに誰が起こすって言うの？」
　まさか運転手さんに頼むわけにもいかないし。
　そう続ける姉さんの言葉に、グッと詰まる。
　正論である。
「さ、そいうわけだから沙慈」
「……分かった」
　まだ少しばかり不満は残っていたが……結局、僕は姉さんに丸め込まれてしまった。
　それでも別に良いかとか、そんなことを考えながら、僕は睡魔を受け入れた。

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少し短め。そして珍しく地の文で『僕』。
どこに行っていたとか、何をしたとかはどうぞ想像を。

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お題：黒 01.モヤモヤ

カウントダウンスタートです。

20になった日がアニメ開始のは…ず。

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01．モヤモヤ　　（ソーマ）



　私にはどうしても理解できない。

　どうしてあのパイロットは、同胞を殺したのか。

　彼ら彼女らは私の弟妹も同然で、それは相手にも当てはまるはず。

　何故なら、その誰かもまた、私と同じ存在なのだから。

　なのに、引き金は引かれた。

　全く。

　全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く、

　私には理解できない行動だ。

　まさか外に出たから無関係、とでも言うつもりだろうか？

　それは絶対に有り得ない。有ってはならないし、有るはずがない。

　私との脳量子波の干渉のし合いが有る限り、無関係では無い。

　それに何より、無関係と言われたら、私たちの存在理由まで脅かされそうだ。

　それは、存在を否定するのと同意語だろう。

　そもそもである。無関係だというのなら、どうしてわざわざ施設に行ったというのか。

　無視でもしていればいいのだ。無関係なら。

　けど、敵である誰かはやって来た。

　つまり、私たちの存在を認め、消そうとしたということ。

　弟妹を、同胞を、その手に掛けるために来たと言うこと。






　……嗚呼、本当に分からない！分からないし解らない！

　私にはどうしても、納得できない。どんな理由があろうときっと。

　どうしようもない感情は気に入らない。私は超兵で、戦うための存在。

　必要ない物は、今のところ必要とされていない。これからは…どうか知らないが。

　けれど今は、絶対に必要ではないから。

　だからこの、分からないが故のモヤモヤを怒りに変えて。





　私は、狩りを開始する。

　ほんの少し、その相手への興味を抱きながらも。

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ソーマは嫌いじゃないです。というか好きな方向かもしれない。
いくらハレアレに酷いことをしていても、あれがきっと戦場の摂理なんだろうと思うと…逆にソーマがハレアレに色々されたかもしれないと思うと……あれ？アレルヤって凄く運悪い？…今更かなぁ。
とりあえず、二期で彼女はどうなっているんでしょう？

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お題：銀 19.テイクアウト

何事にも終わりはあるもの。
夢とて変わりはないのです。

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19．テイクアウト



　ざざぁん…と、波が崖にぶつかる音がする。

　ここは果て。夢の際。

　ここから先には何もない。

　これから先は、これから作りだす場。

　海から新しい大地が現れて、この大地の続きを作る。

　そんな場所に、アレルヤは座っていた。

　ここから眺める海と空は好きだ。

　何色ともつかない、あるいは何色でもないその風景は。

　とても、気に入っている。

　ふと、世界の終焉を思い描いてみる。

　こんな……何色でもあり、何色でもない風景が現れるのだろうか？

　だとしたら、そんな未来はごめんだ。

　この風景が美しいと思うのは、あくまで夢の中だからこそ。

　現実で起こってしまっては、その風景を見る余裕はない。

　残るのはきっともの悲しさ、それだけだ。

　だから、ここに来たらこの風景を眺める。

　現実では有り得ない美しさを焼き付けようと。

「お前も好きだな…この景色」

　ふいに聞き慣れた声を聞き、思わず微笑みを浮かべる。

　振り返る必要はなかった。誰なのか、確信があった。

　君もこっちに来たの？ぐっすりと眠っていたのに。

　そう言えば、ハッと笑う声。

「お前がいねぇのに、気楽に眠ってられるとでも思ってんのか？」

　分かってんだろ？という響きを持つその言葉に、苦笑した。

　そうだね、確かにそうだ。君はとても心配性だから。

「お前限定でだけどな…お前の間抜けっぷりには、本当に目を見張る物があるんだぜ？」

　……あまり嬉しくないお墨付きだった。

　ふて腐れると、気配で感じたらしい。彼はクツクツと笑う。

「機嫌悪くすんなって。事実だろ？」

　……余計、悪い。

　ここでようやくアレルヤは振り返り、背後に立っていた片割れを睨みつけた。

　案の定、彼は面白そうに笑っている。

「言われんのが嫌なら直してみろよ。出来ねぇだろーけど、な」

　僕にだって、やろうと思えば。

「出来るってか？有り得ねぇよ」

　断定されてしまった。

　もう少しばかり機嫌が斜めに曲がり、彼から視線を外して水平線を見る。

　相変わらず、変わらない、変わっていく色。

　それを堪能していた、その時。

　突然の浮遊感が襲ってきた。

　え？と混乱する頭で状況を把握し、半眼になって彼を見る。

　今の自分は小さい。確かに小さい。何せ、子供の姿なのだから。

　だからといって……

「ん？不満か？」

　不満に決まっていた。

　誰が満足に思うだろう？

　子猫みたいに襟首を捕まれて、持ち上げられているという状態を。

　ムスッとした表情を浮かべて反抗の意を示すが、彼に堪えた気配はない。

「そろそろ『帰る』ぞ。夢の外じゃ、もう朝だ」

　そう言う彼を見て、小さく溜息。

　何を言っても無駄らしい。

　このままお持ち帰りみたいに運ばれて、きっと夢から覚めるのだろう。

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今回はハレルヤ。割と分かり易かったかと思います。
絶対に過保護じゃないと困るよね…ほら、アレルヤはオレオレ詐欺に引っかかりそうなほどの間抜けだと言っていたのは彼ですから、そこのところのサポートはしないとね。

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お題：銀 18.ナイフとフォーク

それが、常識。

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18．ナイフとフォーク



　大きな大きな長い四角い机。

　その上には、これまた大きな白いテーブルクロス。

　そして、そこ一面にあるのは数々の甘い物。

　ケーキにクッキー、パフェ、ゼリー。

　どれもこれもデザートばかり。

　まぁ、甘い物は嫌いじゃないけれど。

　これは……やりすぎだと思う。

　とりあえずこの夢の主を捜そうと歩いて、一人の少女を見つけた。

　赤い髪に金色の目が特徴的な人。

　その人は本当に楽しそうに、嬉しそうにデザート達を食べていく。

　何気なしに近寄ってみると、気づいたらしい。彼女はこちらを見た。

「お客さん？めっずらしー」

　持っていたスプーンを置いて、少女はまじまじとこちらを見た。

「こんなとこに来るのって、兄兄ズだけだと思ってたのに」

　物好きっているのね。

　そう言って、少女はこちらにクッキーの乗った皿を差し出した。

「ま、珍しいお客さんだし。サービスね？」

　皿を受け取った自分を見て、少女は笑う。

　それにつられてアレルヤも笑い、その兄弟はどうしているのかと訊いた。

　彼女の言い様だと、たまにここに来るようだが…。

「兄兄ズ？えっと…一番上の人は本に囲まれてる」

　…もう一人は？

「好きな事、色々やってると思うよ？」

　好きな事、と何をしているか限定していないという事は、色々とやっているのだろう。

　その『色々』が少し気になりはしたが。

　敢えて訊くことでもないかと、問いは発さないことにした。

　代わりにクッキーを一つ摘み、口に運ぶ。

　チョコのクッキーだった。

「おいしい？」

　問われ、こくりと頷く。甘すぎず、丁度良い味だ。

　もう一枚を手に取った時。

　一つ、気づいたことがあった。

　皿をテーブルの上に置いて、少女に向かい合う。

　ん？とこちらに視線をやる彼女は、今はケーキを口に運んでいる。

　もちろん、スプーンを使って。

　妙な話。なぜなら、そこにはフォークもある。必要なさそうだがナイフも。

　スプーンよりは、フォークの方が使いやすいだろう。

　どうして使わないの？

　問えば、彼女は何言ってるの？という顔をした。

「そんなの決まってるじゃん」

　ピッとスプーンをこちらに突きつけて、一言。

「だってフォークもナイフも刃物よ？刃物って、人殺しの道具じゃない」

　そんなのでスイーツ食べたら、味が落ちそうだからイヤなの。

　言って笑う彼女に、笑い返す。

　全く持ってその通りだった。

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だって、それは武器に成り得るから。
（それを言ったらスプーンもだけど、例外くらい、ね）



今回は分かり易すぎますね。ネーナです。
彼女は三人の中の代表的な感じで。

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