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登場……前回よりは減りました。一人くらい。
一杯目はジョシュアが全て飲みきってしまったため、今、ヴェーダは二杯目をつくっている真っ最中だ。さっきまで傍には無かったはずのスナック菓子が登場している。何だか、前回よりもヴァージョンアップしていそうで不安なのだが。
回ってきたカードを眺め、そろっているものを捨てておく。
結局、走り出て行ったジョシュアは帰ってこなかった。おそらく、この後も再戦してくることはないだろう。最後に確認したのがあの様子だったから、想像するのは実にたやすい話だった。
彼の二の舞にならないようにするには、一番負けにならないこと。それが重要だ。
だからといって一番勝ちが安全というわけでもなく……ベストは、二番目に勝つことだろうか。その位置なら大丈夫だろう、きっと。
まぁ、最終的にはヴェーダの思いつきによる。今ごちゃごちゃと考えていても仕方がない。それよりは、神に祈る方がまだ有意義だ。そんなことしないけど。
などとつらつら思いながらロックオンのカードを引くと、丁度、カードの絵柄がそろってしまった。
「……あがった」
「マジでか。速いな、刹那」
ちなみに言うと、一番である。
…一番勝ちなのに、どうしてこんなに悲しいのだろうか。普通は喜ばしいことだろうに。何で逆になっているのか。
こんなことなら、沙慈でも連れてくれば良かった。一人でも増やして、罰ゲームに関わる可能性を一%でも削っていれば。そうしたところでこの状況が起こらなかったか、と言われると何とも言い難くはある。だけれど何らかの努力をしていれば、後悔は無かったかもしれない。
肩を落としていると、ぽん、と叩かれる。
「ま、問題は一番負けの人間だが……何とかなるさ」
「……慰めは不要だ、ロックオン・ストラトス」
「そう言いなさんなって」
などと言って笑っていた男は、次に引いたカードであがった。どうしてこのゲームは速く早くに決着がついていくのだろう。大人数でやれば、もっと長引いていく物だと今まで思っていたのだけど。これはあれか、悪夢を早々に終わらせたいという、皆の強い意志があるからこその展開なのか。
とまぁ、それは置いておくとして。
今なら、心の底からこう言える。
「……この世界に神はいない」
「それには賛成だぜ、チビガキ」
言葉が返ってきたので、驚いて声の聞こえてきた方を見る。
そこには苦笑いを浮かべたミハエルと、難しい顔をしたマリナがいた。
残ったのは、この二人らしい。
手持ちの枚数からしてジョーカーを持っているのは、どうやらミハエルのようだ。そして、これからカードを引くのはマリナ。
有利なのは彼女に見えるが……。
どうしてだろうか、とても不安なのだけど。
「神がいたら、憐れな俺たちに救いの手が差し伸べられるだろうさ」
「でも……助かるのはどちらかだけよ」
マリナの目には負けない、という決意の光がともっている。
それを見て安心しかけたが、どうなるか分からないと思い直す。
もしもミハエルが負ければ……それはいい。刹那が彼に「特製ブレンド・パート2」を飲ませればいいだけの話なのだ。
だが、マリナが負けてしまったら……
その時、自分は……
「…あら、ジョーカーを引いてしまったみたいね」
何気ない彼女の言葉に、刹那は戦慄した。
まずい、これは非常にまずい状況だ。ミハエルの勘はかなり鋭くて、こういうピンチの時により威力を発揮する……のだそうだ。ネーナが以前、聞きもしないのに勝手に語り出したのを覚えている。
対してマリナは……危機感が薄い気がする。負けないという気迫はあっても、危ないのではないかという意識が無い。これではある意味、気持ちの面ですでに彼には負けているということにはならないか。
あぁ、もう神はいないのは知っているから魔王でも仏でも聖人でも伝説の勇者でも村人Aでも、ヴェーダでもスメラギでもいい。誰か、マリナを何とか勝たしてやってくれないか、他の誰でもない刹那自身のために。何でもできるわけではないが、できることならだいたいするから。
…という祈りもむなしかったようで、あがったのはミハエルの方だった。
「よっしゃぁっ!」
立ち上がってほえる彼を正直、ここまで憎々しく思ったことはなかった。
なんということをしてくれたんだ、ミハエル・トリニティ。
いつの間にか傍にいたヴェーダから、力なくグラスを受け取ってマリナの所へ。
彼女はこちらをまっすぐ見て、微笑んでいた。
………………が、目は笑っていない。
「刹那、それを早くちょうだい?とっとと済ませたいの」
(刹那、ハッキリ言うと私はそれ、飲みたくないのだけど?)
口から出る言葉と、顔が語る心情。それが思い切り違うのは刹那の気のせいか。
努めて無表情で「特製ブレンド・パート2」を手渡そうとしたとき、ピタリ、と止まってしまう。
理由は、ほんの少しだけれどマリナから放たれている……敵意。それとも、殺意か。
そういうものに敏感なハレルヤが諦めろ、と手振りで伝えてくる。
たしかに、そのほうがいいかもしれない。
しかし、だからといってジョシュアの二の舞にむざむざなるのも……。
「刹那、どうかしたの?」
だが、マリナがにこりと『嗤った』瞬間。
刹那は、自分からグラスの中身をあおっていた。
マリナの身代わりになった刹那が、皆の見る中で倒れていく。
「刹那!?」
「あらあら。そんなに凄かったのね、パート2」
慌てるアレルヤに、暢気なヴェーダ。スメラギはマイペースに酒を口にしている。
黙ってみているわけにもいかず、刹那を壁際に引きずって壁にもたれかけさせてやる。
「……ルヤ、ハレルヤ」
「何だ?」
うっすらと目を開いた刹那が、服の裾を掴んだ。
何やら必死な様子の彼の話を聞こうと、促すと刹那はとぎれとぎれに言葉をつないだ。
「いいか……アレ、ルヤに………あれ…を…飲ませる………な」
手が、落ちた。
……完全に気を失ったらしい刹那を眺めながら、ハレルヤが戦慄の念を抱いたのは当たり前のことだっただろう。
たんなる飲み物、のはずだ。あの「特製ブレンド」は。
なのに、人を一人気絶させるほどの威力をもっている。
刹那の言うとおりだ。絶対に、アレルヤには飲ませてはいけない。
できうる限りのことをしようと、ハレルヤは心に決めた。
二人目は、刹那でした……。
マリナ様の性格が違うかもしれないけれど……そこは大目に見てください。
2525のせいですから……。