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登場……前回よりは一人減りました…あはは。
ついに、戦いも四回戦目に突入する。
三回戦目の被害者、パトリック・コーラサワーは刹那の横でぐったりとしている。もちろん意識はない。彼はマリナとティエリアが壁際まで『引きずって』連れて行って、今では刹那の足の辺りに放置されている。かなり不憫だ。
後でモレノを連れてくるべきだろうか。保健室にまだいるだろうか……多分、いるだろう。彼はこういう理事長とオーナーの突拍子もない思いつきが行われる日は、必ず残業を自主的にしてくれている。なんて良い教員……いや、なんて良い人だろう。
元凶二人にも、彼を見習って欲しいのだけど。
……無理だろうな。
思い、ため息を吐く。
そういうことができる二人なら、そもそもこんな状況にはならない。
「何が入ってたんですか、あれは」
「新しくタバスコに、ケチャップに、トマトソースに、トマトジュースに、リンゴの皮に、すり潰したイチゴに……」
「もういいです」
ティエリアの言うとおりだった。それ以上言わないで欲しい。言われたら、飲む気が失せる。自分にそういう役が回ってくるのがそもそも避けたいところだが、そろそろ自分の番が来そうな気がする。
そして、総じてそういう勘は当たるのだ。今回だけ大丈夫だなんて、気休めだろうと思うことはできない。
「次は何を入れようかしら」
「何も入れなくていいです」
喋りながらも、ティエリアはカードを配っていく。
自分の所にきたカードを見たとき……あ、ダメだ…と思った。あうカードが一枚もなくて、なのに周りのメンバーは次々とカードを捨てているのだ。ティエリアに至っては全部そろってしまったらしく、すでに手札は無くなっていた。
つまり彼が一番勝ち、なのである。
これでは……負けた人は無条件で「特製ブレンド・パート4」を飲むことになるだろう。精神的な戦いだとか、そういうので彼に勝てる人物はいないだろうから。
そして、ついには。
「……………ごめんなさい。あがっちゃいました」
アレルヤがあがってしまった。
残ったのは、ジョーカーを手に持つ自分だけ。
つまり、負けてしまったというわけだ。
「大丈夫ですか?僕が変わった方がいいんでしょうか……」
「お前さんがそんなことをする必要はないさ。これも運だ」
「でも……」
「その案は却下させてもらう、アレルヤ・ハプティズム」
いつの間に近づいてきたのだろう、ティエリアが間に割り込んできた。
手には………………どす黒い、液体が入ったグラス…………?
どうやったら、あんなに黒くなるのだろうか。何を入れたらああなってしまうのか。もうあそこまで行ったら、食材に対する冒涜になるのではないだろうか。それくらいヤバイ気がするのは、絶対に自分が変だからというわけではない。しかも、今回のは無臭ではなくて、どうしてだか甘ったるい臭いが漂ってくる。
どうせなら、もっと嫌な臭いがよかった。ああいうギャップがあるのはちょっと……無臭の時よりも怖い。
思わず体をソレから離すように動かすと、ティエリアがにやりと笑った。
「何が何でも飲んでもらいますよ」
「おまっ……」
目が本気なんだけど…。
誰か助けてくれそうな人を求めて視線をさまよわせてみるが……ネーナもミハエルも人ごとのように見ているし、ヨハンやビリーは同情の視線を送ってきているし、ハレルヤはおもしろがっているようだし、ソーマもマリナはどうでもよさそうだし、グラハムは猫のヴァーチェに夢中だし、脱落者三名には助けを求めても意味はないというかむしろこちらが助けを求められるだろうし……アレルヤはどうにかしようと考えているようだけど、彼を巻き込むわけにはいかないし。
助けを求めることができる人物は、どこにもいなかった。
自分でどうにかするにも、目の前にある壁は高すぎる。一人では乗り越えることなどできるわけがなかった。
「さあ、早くしてください」
ティエリアが、心から楽しそうに笑う。
あぁ、彼にもこういう顔ができたのだな……と現実逃避をしたかったのだが、甘ったるい香りが絶え間なく届いてくるせいか、うまく逃避行動ができない。そういう目的でアレは作られたのかもしれない。
腹を、くくるしかないようだ。
「……分かった。それを渡せ」
「随分と物わかりがいいですね」
その言葉と共に、グラスが渡される。
ひやり、と冷たい温度が伝わってくる。
そっと中をのぞくと、ありとあらゆる物を呑みこんでしまいそうな黒が見えた。
…これをこれから飲み干さないといけないのか……。
酷く憂鬱な気分になるが、やらなければならない。
ロックオンは、覚悟を決めた。
「そういえば『パート1』の時からね、珍しい物入れてたの」
倒れて、運ばれて壁にもたれかからされるロックオンを眺めながら、ヴェーダはポツンと呟いた。
スメラギが視線で続きを促すと、彼女は来ていた服のポケットから、空の小さな小瓶を取り出した。
「それは……?」
「何かの薬、らしいんだけど」
「は……!?」
「あ、大丈夫。体に害のある物は入ってないから」
そういう問題ではない。確実にない。絶対にない。だいたい、「何かの薬」というのは何なのだろう。そういうのは、名称くらいはキチンと知っておくべきではないだろうか。
スメラギでも顔を引きつらせるその真相に、しかしヴェーダは何とも思っていないようだ。笑って話を続ける。
「生命に問題はないっていう話よ」
「どこから貰ってきたんですか……」
「内緒。そういうの、言ったらつまらないでしょ?」
「つまらないとか、そういう話では……」
「安心してって。きちんと実験済みだから」
………実験?
一体、何を使って実験を……いや。
誰で?
しかしそれを訊くのは何だか怖かったので、最後まで口には出せなかった。
それでいいのか、オーナーよ!?
でも、生命に問題なくて副作用もないのは事実なので。