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まだ、ちょっとだけ続くけれどね。
登場……無事な人たち。
「これが最終決戦にするけれど……ブレンドの材料は無くなっちゃったんで、罰ゲームは変更させてもらうわ」
突然のヴェーダのこのセリフに、驚いたのは自分だけではないだろう。
驚きの対象は『罰ゲーム変更』ではない。『ブレンドの材料は無くなった』という方である。
まさかあの量が無くなるほど使用していたとは……恐ろしい話だ。
ちらりと彼女の後ろを見ると、空のビン、開けられた袋、何も入っていない容器……積めば山になりそうなほどの残骸たちが、転がっていた。
あれだけの量を全て消費したというのか。
……と思ったが、よく見ると未開封の箱も幾つかある。
これは一体、どういうことだろうか。
ティエリアが、すっとヴェーダを見た。
「ヴェーダ、無くなったって……何がです?」
「だから材料よ」
「それってまさか……」
呟くスメラギには、それがどういうことか分かっているらしい。
しかし……彼女の顔色のせいで聞くに聞けない。スメラギの顔は明らかに青ざめていて、話かけるのも憚られたのだ。この、自分でさえ。
「多分、スメラギちゃんの思っているので正しいと思うけど」
「そう……ですか。あの小瓶の中身が……」
「そうなの。じゃ、ゲーム再開ね。罰ゲームに関わる人も、ちょっとだけ条件変えるから。あ、でも一番負けが関わるのは一緒だから。じゃないと罰ゲームにならないし。そこのところよろしく」
ぐったりとしているスメラギを気にする風でもなく、ヴェーダはマイペースにことを進める。にこやかに。ちょっと「ヴェーダ」という存在が怖いと思った。
……とりあえず競技は変わらないようで、ティエリアがまたカードを配り始める。
「じゃ、ラストゲームスタートね」
………という言葉があってから数分後。
「……まさか、君と戦うことになるとはね……」
「へっ、勝てばいいだけの話だろ」
残っていたのはアレルヤと、自分だけだった。
ジョーカーは今、ハレルヤの手にある。持っているカードの枚数は二枚。
対してアレルヤは一枚。そして、今はアレルヤがカードを引く番だった。
真剣そうな表情のアレルヤ。
……だが、彼は忘れてはいないだろうか。アレルヤがハレルヤにこういうゲームで、勝てたことは一度もないということを。
それはハレルヤがアレルヤの行動パターンを、しっかりと把握しているからに他ならない。
例えば。二枚ある撃ちのカードを一枚、少しだけ上になるようにしてやれば……
「じゃ、これ引くね……あ」
必ず、下のカードを引く。
上のカードを引く、というお約束な行動をしないところは褒めてやるべきかもしれないが……読まれてしまっては意味がないだろう。
この次は上、その次はまた上、そして下……と、彼がどういう行動をとるか手に取るように分かる。双子だからというのもあるが、何よりも、アレルヤのことを今までしっかりと見ていたからこそだろう。
ここから先は時間の問題だ。早いか遅いか、それが違うだけで絶対にハレルヤが勝つ。
そして、その瞬間はあまりにもあっけなく訪れた。
「俺これな……って、あがっちまったんだけど」
「早いよハレルヤっ」
「しょうがねぇだろ。お前、顔に出過ぎなんだよ」
時間の問題でもなかった。アレルヤは、顔に感情を出しすぎなのだ。ジョーカーかどうか、一発で分かってしまう。今まで勝ち続けてきたのが不思議なくらいに。
ほんのわずかなブレでも簡単に分かるのは、もしかしたらハレルヤだけなのかもしれない。他の寮生だとか同級生だとかは、上手く読み切れないのかも。そうでないと説明がつきにくような……いや、今までアレルヤの隣にいたのは、だいたいどこか抜けてそうなのが多かった。心ここにあらずとか、そんなのばかり。
結局、片割れが勝てていたのは運によるものが大きかったようだ。
「一番負けはアレルヤ?」
「…はい、そうです」
ヴェーダにコクリと頷くアレルヤを見て、負けてやるべきだったかとか考える。あの飲み物が無くなったから、普通に勝っても大丈夫だろ、と思っての行動だったのだけど。
「じゃあ、罰ゲームに関わるのはアレルヤとハレルヤね」
「………………は?」
何で俺も!?
状況に追いつけずにいても、そんなことを気にするヴェーダではない。
いたってマイペース。さらには微笑んでさえみせる。
「アレルヤに罰ゲームはしてもらうわ」
「それはそうでしょうけど……えっと、何をするんでしょう」
「実はね、やることを決めるのは私じゃないの」
「え?」
「決めるのはハレルヤよ」
「はい?」
いきなり名前を出されて、驚く。どうしてこの状況で自分の名前が出てくるのか、全然理解できないのだが。
同じ気持ちだったのだろうか。ティエリアが若干硬い表情で彼女に話しかけた。
「どういうことですか、ヴェーダ」
「簡単なことよ。二番負けが一番負けに何でも好きなことをさせられる。それが今回の罰ゲーム。こういうのって、教えていない方が楽しいでしょう?」
それはそうかもしれないが、そういう大事なことは事前に教えておいて欲しい。
とまぁ、それは置いておいて……これは結果オーライだ。
こういうルールならソーマどころか他の誰にも、ハレルヤを邪魔することはできない。なんといっても学園オーナーが許可をしているのだし。反対でもすれば、しばらくは彼女につきまとわれる。それは嫌だろう。
「ね……ちょっとハレルヤ?何だか凄く嫌な予感がしてるんだけど……」
「ん?あぁ、心配すんなって」
不安そうなアレルヤに、笑いかけてやる。
「たいしたことはさせる気無いからな」
「その『たいしたこと』が、一体どこら辺まで含まれるのかが分からないから怖いんだってば!」
アレルヤが睨みつけてくるけれど、残念なことにまったく怖くない。
「なぁ、ヴェーダ。その罰ゲームってのは今すぐじゃねぇといけないわけ?」
「いいえ。準備があるのなら、それができてからでいいわ」
「……そうこうなくちゃな」
さて、何をさせてやろうか。
その時のことを考えて、ハレルヤはにやりと笑った。
頑張れ、アレルヤ……