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いや、書くのはあまりにもっていうか……なので。
登場……アレルヤ、ハレルヤ、ティエリア
「嫌だッ!絶対にそれだけはッ!」
「諦めろ!もっと着せたかったけど、これだけで終わりにしてやるから!」
「なッ……どれだけ着せるつもりだったの!?」
ハレルヤが『第二部』と称した理由が分かった気がする。
もう、それは男子制服だとか女子制服だとか、そういうものではなかった。
というか、どこからそんなモノを持ってくるのだろう……。
とまぁ、それはともかくとして。
「とにかく、僕は嫌だッ!それ着るくらいなら、みんなと一週間話せないっていうほうがまだ、ずっとマシだ!」
アレルヤは必死だった。冗談抜きに。
あの服だけは本当に嫌だった。あんなのを着せられるくらいなら、一週間の苦くらい耐えきってみせる。話すことができないのは悲しいが、それで今この瞬間をなんとかできるのなら安いもの。
「そう言うなって……な?」
「ダメだってば!」
ゆっくりと歩み寄ってくるハレルヤから逃れるように、アレルヤはジリジリと交代していく。
捕まったらアウト。あの服を着せられてしまう……。
それを防ぐには、何としてでも逃げなければ。
……でも……どうやって?
悩むが、良いアイディアは浮かばない。部屋からの出口は、ハレルヤの後ろにある。あそこから出るには、双子の兄の横をすり抜けていかないといけないけれど……そんなことを許す、彼ではないだろう。すぐに捕まって、それで終わり。それからあの服を着せられることに……想像しただけで顔が引きつりそうだった。
などと思っているうちに、背中にドン、という衝撃が。
振り返ると、そこは壁。窓のすぐ横にある、壁に行き当たってしまったようだ。
「しまった……っ」
「逃げ場は、もうねぇなぁ?」
完全に悪役な笑みを浮かべて、ハレルヤはにじり寄ってくる。
考えている暇は、無かった。
アレルヤは躊躇いなく閉まっていた窓を開き、窓枠に足をかけて……
「ちょっ……お前、待てって!」
「離してハレルヤ!」
「離せるかッ!だいたいここ、二階だろーがッ!」
飛び降りようとしたところを、ハレルヤに捕まってしまった。
彼の腕の中から抜け出ようともがくものの、片割れはしっかりと腰に抱きついていて離れない。振り解けそうにない、凄い力だった。
けれども、だからと言って諦めるわけにはいかない。あの服を着るのは、絶対に阻止しなければ。
「二階って、君だっていつも飛び降りてるじゃないか!」
「俺はいいんだよ、俺はなっ!だけど、お前はダメだ!」
「差別だろ、それッ!とにかく僕は逃げるから!」
「ざっけんなッ!そんな格好で外に出る気か!?」
それはハレルヤの言うとおり。アレルヤはまだ、女子制服を着せられたままだった。こんな姿で外に出て、誰かに見られでもしたら大変なことになるだろう。人は、噂がとても好きだから、あっという間に学園中に広まるに違いない。
だが、そんなことを気にしないほどアレルヤは切羽詰まっていた。今はただ、ハレルヤから逃げることが何より。それ以外はどうでもいい。
だから。
「そんなこと知らない!」
「なっ……」
兄は驚いたようだが、その言葉は今の自分にとって、ごくごく当たり前のものだった。
少し緩んだ手を振り解こうとした、そのとき。
「……何をしている?」
下から声がしてきた。
思わずピタリ、と行動を止めて、恐る恐る視線を落としていく。
最初に見えたのは、紫色。それから眼鏡。
ここまで言ってしまえば分かるだろう。
そう。そこにいたのは生徒会会長……ティエリア・アーデだった。
思わぬ登場人物に、少し困惑する。まだ学校は終わっていないはず。それに、お昼休みまではあともうちょっと、時間がある。というわけでこの時間、彼は教室で授業を受けているはずなのだけど。
「質問に答えろ」
「えっと……」
「罰ゲームだよ、一週間前のな」
「一週間前……あぁ、なるほどな」
何となく答えるのが憚られて躊躇っていたけれど、ハレルヤはいとも簡単に口を開いて現状を話してしまった。
それを受け、ティエリアは納得した様子。
何回か頷いて、それから表情を変えずに一言。
「一瞬、君がそっちの趣味に目覚めたかと思った」
「そんなわけないでしょうッ!?」
「冗談だ。……それより、いいのか?」
すっと真剣な顔になって、彼は言った。
その言葉が何を指しているのか分からず、ふいと後ろを見ると、ハレルヤも分かっていないようだった。首をかしげている。
はぁ、とため息を吐いて、ティエリアは呟いた。
「下からスカートの中身が丸見えだぞ」
静寂が、辺りを包んだ。
つまりあれだ。アレルヤは窓枠に足をかけていて、身を乗り出している。ハレルヤが腰の辺りに抱きついているから出られないものの、体の大部分は外に出ているわけで……そんな状態な上に丈の短いスカートを着用中だから……。
「うわぁッ!?」
どういうことかが分かった瞬間、アレルヤは今まで以上に顔を赤くして、窓からバッと離れた。途中、ハレルヤを突き飛ばした気がするけれど、それどころではなかったので正確なところは不明。
窓から一メートル以上離れた辺りに行って、へたり込んで、ようやく落ち着く。
「……気づくのが遅いな」
「そっ……それはそうかもしれないですけど!」
「まぁ、いいか。それより……ハレルヤ」
「………………………なんだよ」
仰向けに倒れていたハレルヤ(どうやら……しっかりと、ぶつかっていたらしい。後で謝らないといけない)がゆっくりと体を起こして、窓から下を覗き込んだ。ティエリアと話をするらしい。
「俺に何の用だ?つーか、今更だが、テメェはどうしてここにいんだよ?」
「今のアレルヤの写真を撮っておけ。この後も何かするならその分も忘れずにな。後日取りに行く。それから、ここに来たのはヴェーダから逃げてきたからだ。さっきまで彼女の相手をしていたからな……」
「一人で、ですか?」
「その声はアレルヤだな?…そうだ。アレルヤ、君の最近の行動は彼女の耳にも入っている。ずっと看病で働きづめだった君を呼ぶほど、鬼では無かったということだ」
それは、喜ぶべきことなのだろうか……。少し、微妙な気がする。
とにかく、ティエリアだけにヴェーダの相手という、とても疲れる役割をさせてしまったことに罪悪感を覚えた。それはさぞ、大変だったことだろう。
「では、俺はそろそろ行く」
「あ、はい。また後で……」
「もう来んじゃねーぞっ!」
ティエリアの気配が遠ざかっていくのを感じる。気配を感じるよりは窓から見た方が分かり易いだろうけれど、残念なことにそんなことをする気にはなれなかった。さっきの今、だったから。
はう、とため息を吐いていると、いつの間にかハレルヤが目の前に立っていた。
「えと……ハレルヤ?」
丁度、逆光になっていて…変な雰囲気が出ている。
表情も見にくかったが、少なくとも笑みを浮かべているのは見て取れて……。
「怖いんだけど……」
「なぁ、アレルヤ」
ハレルヤはしゃがんで、視線を合わせながら笑う。
「もう、逃げられねぇよなァ?」
気づけば、肩が掴まれていた。
それからしばらく後、一番最後の服を着たアレルヤの写真が、ハレルヤの引き出しの中に、大事そうに保管されているのを刹那が見つけたとか何とか……。
というので、罰ゲームシリーズ〈?〉終了です。
長々しいのに、おつきあいありがとうございました。
アレルヤが最後に何を着せられたのかは、皆さんのご想像にお任せいたします〈笑〉