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type5はこんな感じのシリーズ物に。っていう予定です。
01:旅立ち
「というわけで日本列島一周の旅を始めるぜ!」
「何が『というワケ』なのかが全ッ然分からねぇ」
「政宗、世の中には気にしてはならぬ物があるのだ。例えばそう、あの馬鹿鬼の存在意義といった事などはな。気にして考え出すと憐れな結果しか出ぬ」
「よーし毛利、ちょっと武器持ってこっち来ねぇ?」
「良かろう。今日こそ長き日々の因縁、晴らしてくれようぞ」
「Stop!ちょい待てアンタら!」
殺気立ち始めた二人に慌てたのは、他でもなく政宗だった。
ここは奥州で、ついでに言うと政宗の居城である。そこでこの二人が本気で戦うようになってみれば、修理が大変なことになるのは必至。同時に、小十郎からの長々とした小言に付き合わされる可能性も大きかった。
それは、避けなければならない。特に後者の方を。
くる、とこちらを向いた二人に、政宗はまくし立てるように言った。
「いきなり来て『旅開始』なんて言われても困るんだよ!てーかそンな事を言った後に言われたヤツを放置するか普通!ねぇよんな状況!」
「む…政宗の言うとおりぞ」
「だな……ち、今回は諦めるか」
「この城を出た後にでも機会を探すのが良かろう」
「戦うことは前提なのかよ」
決着が付かないような気がするのは気のせいか。
気のせいだと思うことにして、政宗は事情説明を求めるべく元就の方を見た。
それだけで元就は察したようで、こくりと頷いて口を開いた。
「つまりだ、我らと政宗とで日本中を旅せよと、そういうわけなのだ」
「まんまかよ」
もっとひねりとか入れ様はなかったのか。
「うむ。そして、そのメンバーが我、政宗、そしてこの馬鹿」
「馬鹿たぁ何だ馬鹿たぁ!」
「そのままの意味ぞ」
「テメェ…っ」
「落ち着け元親!後で外に出て人の邪魔になんねー所でならいくらでも戦って良いから!そうしねぇと俺が小十郎にどやされる!」
今すぐにでも元就に飛びかかりそうな元親をどうにか止めていると、ふ、という笑い声が直ぐ側から聞こえた。当然、それは元就の物である。
彼は笑みを浮かべたまま、その視線を元親…ではなく、自分の方に向けた。
「騒がれたくない本音はそれであろう」
「…ま、そういうことだな」
「ふむ、ならば今回はちゃんと考慮の材料にそれを入れようぞ」
「悪いな…って、そういや旅行とやら、小十郎に訊いて来ねぇと」
「問題は要らぬ」
「ん?もう言ってきたのかよ?」
「いや、事後報告でよいといったのだ」
「な!?」
先に言ってから出かけるよりも、帰ってきた後に事情を説明する方が色んな意味で困難ではないだろうかと、そう思うのは自分だけではないだろうに。
だが、元就は心配ないというように人差し指を立てて、言った。
「小十郎以下伊達軍の将軍たちは少々気絶…ではなく、昼寝に興じてもらうことにした」
「気絶って言った!?今、気絶って言ったよな!?」
「聞き間違いであろう」
「こんな聞き間違いはしねぇ!」
「む…確かにそれは認めるしかあるまい。が、行ったのは我ではなく、かの鬼であるぞ」
「…ったく、人使いが荒いんだよ、毛利は」
巨大な槍を携えたまま言ってため息を吐く元親を、政宗は何とも言えず眺めた。家臣たちを気絶させて回ったその実力を褒めるべきか、それとも殺意がないとはいえ危害を加えた事に対して文句を言うべきか。
考えた結果、どっちもしないことにした。それが一番公平だろう。
「ともかく、これで事後報告しか出来ぬという我の言葉の真意は分かったな?」
「分かるも何も分かるしかねぇだろ」
「では行くぞ」
「決定事項かよ」
まぁ、別にそれでも良いけれど。
軽く肩をすくめて、政宗はとりあえず旅支度をすることにした。
こんな旅立ちの日もありじゃないですか?