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以前の「髪切りの幸人」の続きです。
帰ってボスに報告的な。
「…以上で報告は終了だぜぇ」
「そうか」
ぱさ、と報告書を机に落とすザンザスの様子を、スクアーロは注意深く伺っていた。
大丈夫。まだ大丈夫だ。
…正直、気付かれないまま終わるとは到底思えなかったのだが、それでも今はまだ気付かれていないと判断して幾ばくかの安堵を覚える。まぁ、どうせ、これもあと少しで綺麗に覆される安堵だろう。
今報告している任務で、敵に髪を切られた。
油断はしていなかった。むしろ油断をしていたからこそ髪だけで済んだのである。意外と、相手は強かった。もしも油断をしていたら髪だけでは済まなかったのかも知れない。もっとも、そうであっても後れを取ったとしても、任務を失敗したと思えないのだが。
しかし苛立ちはあった。たとえ意外に強い相手だろうと、髪を傷付けられた自分に対しての、酷く深い苛立ちが。
「ところで、だ」
ふいに、ザンザスが、口を開いた。
その声音に感じる物があり、スクアーロは軽く肩を落とした。
あぁ、やっぱり気付かれたか。
頭をガシガシと掻きながら、息を吐く。
「…分かってるぜぇ。髪のことだろ」
「誓いの証だの何だの言って騒いでた割に、あの程度の雑魚に切り落とされやがって」
「あの程度ってなぁ…知ってんのか?」
「顔も合わせたことねぇな」
「そんなんで断言すんのかぁ?」
「髪が切られた以外に傷はないと言ったのはテメェだろうが」
「…」
つまり判断材料はそれだけか。
相手にとっては充分な材料なのかも知れないが、それを他の者が訊けば何という反応をするだろうかと、一瞬だけスクアーロは考えた。直ぐに止めたけれど。どうせあっという間に出る答えだ、わざわざ考えるまでもない。
はぁ、と今度はため息を吐いて、ザンザスのいる方に少しばかり近寄る。
「油断はしなかったぜぇ」
「当然だ。ンな事してみろ、今この瞬間にテメェは消し炭だな」
「だろうなぁ…」
フン、と笑う上司に、こちらは苦笑を浮かべるほか無かった。その時の状況がありありと浮かんできてしまっては、それ以外に浮かべるべき表情はない。
それから続けて言葉を紡ごうとしたのだが、ザンザスが自分の髪をいじりだしたので、止めた。いじっているときはいじらせておくに限る。妙なところで邪魔をしてしまったら自分の身が本当に危ない。
しかし、と、ろくに身動きの出来ない状態で今日のあの、髪を切り落とした相手の事を思い返してみる。攻撃はちゃんと避けたはずだったのだが…少し、刃が目に見えているのとはずれて存在してたように、今なら思える。幻術でもかけていたのかもしれない。こちらは今、思っても分からないことだったが。
確認くらいしておくべきだっただろうかと考え、それこそ意味がないと結論づけた。過去は過去、この程度の事ならばそれだけで済む。
これからはもう少しくらい余裕を持って避けるべきか?などと真剣に見当している間に、ふいに髪を強い力で引っ張られて前につんのめる。
「う゛お!?」
「カス、一つ言っておく」
引っ張った張本人はそう、口を開いた。
「今度似たようなことがあったら覚悟しておけ。誓いだの何だの、先に言い出したのはテメェだからな」
「…つまり髪は傷付けんな、ってか?」
そして責任は取れ、ということか。
「ンなもん面倒なだけの代物だが、勝手に切らんのは気にいらねぇ」
「そうかよ。んじゃ、これからはちゃんと気をつけてやるぜぇ」
「気をつけてやるじゃねぇ、ドカス。気をつけさせていただきます、だろうが」
「…気をつけさせていただきます」
本当はあまり言いたくなかったのだが、ここは素直に従うことにしてスクアーロはそのまま言葉を繰り返した。反抗的態度を見せた瞬間に、この状況なら一気に燃やされかねないような気がするので。多分、気がするとかではなくてじっさいに燃やされるだろう事も、想像に難くない事もあるし。
それからザンザスに少し離れたところに立てと言われたのでこちらも大人しく従い、ドア横の壁の辺りまで辿り着いて振り向き…表情を引きつらせた。
「…ボスさんよぉ…そこまでやるかぁ…」
談話室にあるそこそこ軽い椅子とは違って、飛んでくるのはそこそこ重い椅子。
よっぽど怒らせせてしまったのかと思い、今度こそはと決意したところで衝撃と、それから、暗転。
これからは頑張りましょうと言うことで。
「そうか」
ぱさ、と報告書を机に落とすザンザスの様子を、スクアーロは注意深く伺っていた。
大丈夫。まだ大丈夫だ。
…正直、気付かれないまま終わるとは到底思えなかったのだが、それでも今はまだ気付かれていないと判断して幾ばくかの安堵を覚える。まぁ、どうせ、これもあと少しで綺麗に覆される安堵だろう。
今報告している任務で、敵に髪を切られた。
油断はしていなかった。むしろ油断をしていたからこそ髪だけで済んだのである。意外と、相手は強かった。もしも油断をしていたら髪だけでは済まなかったのかも知れない。もっとも、そうであっても後れを取ったとしても、任務を失敗したと思えないのだが。
しかし苛立ちはあった。たとえ意外に強い相手だろうと、髪を傷付けられた自分に対しての、酷く深い苛立ちが。
「ところで、だ」
ふいに、ザンザスが、口を開いた。
その声音に感じる物があり、スクアーロは軽く肩を落とした。
あぁ、やっぱり気付かれたか。
頭をガシガシと掻きながら、息を吐く。
「…分かってるぜぇ。髪のことだろ」
「誓いの証だの何だの言って騒いでた割に、あの程度の雑魚に切り落とされやがって」
「あの程度ってなぁ…知ってんのか?」
「顔も合わせたことねぇな」
「そんなんで断言すんのかぁ?」
「髪が切られた以外に傷はないと言ったのはテメェだろうが」
「…」
つまり判断材料はそれだけか。
相手にとっては充分な材料なのかも知れないが、それを他の者が訊けば何という反応をするだろうかと、一瞬だけスクアーロは考えた。直ぐに止めたけれど。どうせあっという間に出る答えだ、わざわざ考えるまでもない。
はぁ、と今度はため息を吐いて、ザンザスのいる方に少しばかり近寄る。
「油断はしなかったぜぇ」
「当然だ。ンな事してみろ、今この瞬間にテメェは消し炭だな」
「だろうなぁ…」
フン、と笑う上司に、こちらは苦笑を浮かべるほか無かった。その時の状況がありありと浮かんできてしまっては、それ以外に浮かべるべき表情はない。
それから続けて言葉を紡ごうとしたのだが、ザンザスが自分の髪をいじりだしたので、止めた。いじっているときはいじらせておくに限る。妙なところで邪魔をしてしまったら自分の身が本当に危ない。
しかし、と、ろくに身動きの出来ない状態で今日のあの、髪を切り落とした相手の事を思い返してみる。攻撃はちゃんと避けたはずだったのだが…少し、刃が目に見えているのとはずれて存在してたように、今なら思える。幻術でもかけていたのかもしれない。こちらは今、思っても分からないことだったが。
確認くらいしておくべきだっただろうかと考え、それこそ意味がないと結論づけた。過去は過去、この程度の事ならばそれだけで済む。
これからはもう少しくらい余裕を持って避けるべきか?などと真剣に見当している間に、ふいに髪を強い力で引っ張られて前につんのめる。
「う゛お!?」
「カス、一つ言っておく」
引っ張った張本人はそう、口を開いた。
「今度似たようなことがあったら覚悟しておけ。誓いだの何だの、先に言い出したのはテメェだからな」
「…つまり髪は傷付けんな、ってか?」
そして責任は取れ、ということか。
「ンなもん面倒なだけの代物だが、勝手に切らんのは気にいらねぇ」
「そうかよ。んじゃ、これからはちゃんと気をつけてやるぜぇ」
「気をつけてやるじゃねぇ、ドカス。気をつけさせていただきます、だろうが」
「…気をつけさせていただきます」
本当はあまり言いたくなかったのだが、ここは素直に従うことにしてスクアーロはそのまま言葉を繰り返した。反抗的態度を見せた瞬間に、この状況なら一気に燃やされかねないような気がするので。多分、気がするとかではなくてじっさいに燃やされるだろう事も、想像に難くない事もあるし。
それからザンザスに少し離れたところに立てと言われたのでこちらも大人しく従い、ドア横の壁の辺りまで辿り着いて振り向き…表情を引きつらせた。
「…ボスさんよぉ…そこまでやるかぁ…」
談話室にあるそこそこ軽い椅子とは違って、飛んでくるのはそこそこ重い椅子。
よっぽど怒らせせてしまったのかと思い、今度こそはと決意したところで衝撃と、それから、暗転。
これからは頑張りましょうと言うことで。
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