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久しいような……お題が。
気のせいだとは思うんだけど。
何でだろう…?
05.秘密
それは、偶然の出来事だった。
まだ食事には早い時刻、何となく食堂の方へ行って。
「味、どうですか?」
「凄い美味いんだけど……」
クッキーを作っていた、アレルヤとフェルトに会った。
どうやらフェルトは、アレルヤに作り方を習っていたらしく、それを知ったとき、ロックオンは驚くと同時に、納得もしていた。
アレルヤとは、何度かミッションで一緒になっている。そういうわけだから、同じ待機場所で何度か食事を共にしたこともある。
大体は交代制で、だから今まで、ロックオンは数回ほどアレルヤの手料理を口にしているわけだ。だから、彼がそういうことが得意なのは知っている。ちなみに言わせてもらうと、刹那とティエリアは、決して料理を作ろうとはしない。というか、刹那の方はこっちが止めろと言っている。どうやったら、作る物を全て黒炭にできるのだろうか……あれは一種の才能だろう。
「これ、どうすんだ?」
「みんなに配ろうと思ってるの」
「ラッピングもできてますよ。これ、ロックオンのです」
「お、さんきゅ」
デュナメスと同じ色の小さな袋を受け取ながら、頬が緩むのを止められなかった。
嬉しいものだ。こういう物を、イベントでもなく普通の時に受け取れるのは。
「じゃあ、フェルト、みんなに配ってきてくれる?」
「分かった。ロックオン、アレルヤ…また後で」
ラッピング済みの袋を全て抱え、フェルトは小走りでキッチンから出て行った。
袋の中に青と紫があったのは、見間違えではないだろう。
「マイスターの分は、何か違うのか?」
「そうなんです。フェルトが、いつも大変だから、その分ちょっと大目にいれておこうって。サービスだそうですよ」
実にフェルトらしい心遣いだった。
「そういえば、どうしてアレルヤは行かなかったんだよ」
「あ…僕、もう一つ作ってる物ありますから」
「もう一つ?」
「はい」
アレルヤが頷くのと、電子レンジが音を立てたのは同時だった。
何だ?と思いながら見ていると、そこから現れたのは五つのシンプルなマフィン。
「どうしたんだよ、これ」
「ハレルヤが作れって言うんです。全部自分で食べるからって」
「……なるほどな」
酷く納得した。
確かに、ハレルヤならそのくらい言う。アレルヤも、彼の言うことならば苦笑しながらでも、楽しそうに作ってやるに違いない。
仲がよいのは良いことだけれども、何となく妬けてしまう。
まぁ、だからといってそれを上には出さないし、言いもしないけれど。
「そうだ……ロックオンも、一ついりますか?」
だが、アレルヤがこう言ってくれるというのなら、話は別だ。
「いいのか?」
「大丈夫ですよ。一つくらい減っても、怒らないと思うし」
ハレルヤだって、まさか、そこまで子供じゃないですよ。
そう笑うアレルヤの手から、いや…多分怒るんじゃないか……?と思いながらも、マフィンを受け取る。こういう時は、何も言わないのが一番だ。
「んじゃ、ありがたく頂戴するぜ」
「はい。あ、でも、他の皆には内緒ですよ?」
「分かってるって」
言われなくても、そうするつもりだった。バレたら、刹那とティエリアからの報復が来そうで怖いから。
どこかから情報が漏れるかもしれないが、その時はその時。
今は、この幸福な時間を味わっていよう。
……ちなみにこの十秒後、刹那とティエリアが殴り込んできたという。
あの二人なら、たとえ何かをしていてもすぐに来れると思う。