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焼きたてのパン。
飲み物の注がれたグラス。
小さな皿に盛られたサラダ。
用意されたバターにチーズ。
それらが置かれたテーブル。
―――そして、眠っているアレルヤ。
床に座り込み、壁にもたれかかって寝息を立てている彼を、現在のキッチンの状態を把握しながら、ティエリアは呆れて見た。
今が朝ならば、この光景も分からなくはない。あり得ないということは無く、寝不足だったのかと考えることができる。彼の生真面目な性格はおいておく。それを考慮に入れたら、この状況は完璧にあり得ないので。
だが……今は昼。しかも真昼。
太陽が最も高い位置にある時間帯。
ポカポカと暖かいから眠気は誘われるかもしれないが、彼は早寝遅起きの生活習慣持ち。あれだけ眠っていて、まだ寝足りないというのは……幼児でもあるまいし、そうあることではないだろう。
これらのことから、どう考えても彼が眠りこけているような時間帯ではない。
……まぁ、この光景も毎日のことなので、昔のように驚くことは無くなってしまったけれど。
とりあえず、ティエリアはテーブルの上にあったトレイ(鉄製)を手に取り、それでアレルヤの頭を力一杯叩いた。
ごうん、という鈍い音が響く。
「…った!?」
「起きたか、アレルヤ」
「あれ、ティエリア……どうしてここに…って、あ…」
さすがに痛かったのか、勢いよく飛び起きたアレルヤは、すぐに状況を理解したらしい。バツの悪そうな顔をした。
それを一瞥し、ティエリアはくるりと体の向きを変えた。
パンの、入ったカゴを持って。
「もう眠るな。俺は早く昼食を取りたい」
「うん……ごめん」
彼を置いて進んでいくと、両手を彼が持っているパン以外の昼食の用意で塞いで、後ろからアレルヤが慌てて追いかけてきた。
まるで……はぐれまいとする、子犬のよう。
それの様子に薄く微笑みながら、ティエリアは足を速めた。