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「……相変わらずだな」
「あ、刹那……」
騒々しさに呼ばれてアーデ邸へ足を運び……いつも通りの様子を目の当たりにして、刹那は呆れの感情を抱いた。
視線の先には殴り合いのケンカをしている屋敷の主と、その主に養ってもらっている立場のハズの居候の姿……といっても、殴りかかるハレルヤを、ティエリアが受け流しているだけのはなしだったけれど。しかも片手で。
どうせなら本気で相手をすればいいのに……いっそのこと。そうすれば、ハレルヤがムキになってかかっていくこともないだろうに。こういう無益な戦いを止めるには、圧倒的な力を見せつけるのが手っ取り早いのだから。
とりあえずアレルヤの持つ物を少しばかり受け取って、二人で先に食堂へ行っておこうと促す。ケンカをしている彼らの決着が待つまでここにいる、というのも変な話だと思うから。別に、観客をしているわけでないのだし。
「刹那の分は用意してないけど、いいのかな?」
「構わない。俺はもう食べた。……ところで」
「ん?」
何?と彼が首をかしげてこちらを見る頃には、刹那たちは無駄に大きな食卓のある部屋へ辿り着いていた。
コトリ、と手にあった物を置き、アレルヤの顔を見上げて左腕を差し出す。すでに服の袖は捲ってあって、色づいている自分の肌が空気に触れている。
「どうせ、今日はまだ摂取していないだろう?早めにしておいたほうがいいと思うが」
「……でも……いいの?」
刹那と同じように荷物を置き、心配そうな眼差しを向けるアレルヤ。
心遣いは嬉しく、実に彼らしい物だった。だけれど。
「愚問だ。俺は一回くらいでは死なないし、健康も損なわない。だが、アレルヤは違う」
「それはそうだけど……気分とか、悪くならない?」
「アレルヤだったら大丈夫だ」
ハレルヤだったら嫌だが。
そう、心の中で呟く。
こんな申し出をするのも、アレルヤが相手であるからこそ。他のヒトにはこんな行為、決して許す気はない。
「そう、なの……?なら……」
「好きなだけ取るといい」
「それはダメだよ」
くすりと笑い、それからアレルヤは顔……否、口を刹那の腕にゆっくりと近づけていって、そして。
「ありがとう、刹那…………いただきます」
牙が、自分の腕に突き刺さった。