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片手でカゴを持ち、片手でハレルヤを引きずって食堂に入り……最初に目にしたのは、刹那の腕から口を離すアレルヤの姿だった。
その様子に、少々不快感を覚える。毎日アレルヤに血を与えるのは、ティエリアのちょっとした楽しみなのに……いや、変な意味ではなくて、ただ単に絆が少しでも深まるような気がするから。
だから、アレルヤにも無闇に他人に血をもらうなと、何度もきつく言ってあるが……そうだった。彼にとって、刹那は「他人」ではなかった。年の離れた弟分というか……そういえば。
見ると、刹那がざまあみろ、という風に笑っている。
……そうか、確信犯か……
ハレルヤの服から手を離し(ゴン、という鈍い音がしたが、気にしない)、つかつかと歩み寄って手刀を落とした。
刹那にではなく、アレルヤに。
「いたっ!?」
「俺以外から血をとるな」
「それは理不尽な話ではないか、ティエリア・アーデ」
「刹那・F・セイエイ、君は黙っていろ」
そもそもどうして、刹那はここにいるのだろう。単なる近所の住人であるだけの彼が。用事も何も、きっかけすら無いはずだが。
訊くと、返ってきたのは「騒がしかったから気になった」という言葉。
……つまり、きっかけはハレルヤ、というわけか。
「ちょっと待て!テメェも原因だろっ!?」
「知るか。というか、勝手に人の心の声にツッコミを入れるな」
「入れたくもなる……ぶっ!?」
頭に、どうしてだか大きなこぶを付けている彼は、起き上がるとギャーギャーうるさくまくし立ててきた。
うるさかったので、何も言わずに彼の顔面を靴裏で蹴りつける。
ふらり、と揺れて、それから再び倒れていくハレルヤを見て、少しだけ気分を良くする。何だかすっきりとした。
「ちょっ……ハレルヤ!?え、だ、大丈夫なの!?」
「アレルヤ、彼は眠たいそうだ。しばらくそっとしておいてやれ」
「……どの口で言う。蹴っていただろう、ティエリア」
「見間違えだろう?」
「見間違えって……そんな!?」
何やら慌てているアレルヤに席に着くように促して、自分はとっとと座る。
先にも思っていたけれど、ティエリアは早く昼を食べたいのだ。何故なら、もう三時……世間では、おやつの時間、と言われる時刻だったから。
腹も、減るわけである。