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この辺りに『異端』が出るという話を聞いて、やっては来たものの……自分が今いる森は平和だし、動物も普通に生活しているし……どう見ても、そんなものがいるようには思えなかった。
もしかしたら、あの話はデマだったのかもしれない。『異端』が近くにいたら、こんなにのどかな風景は見ることができないだろうから。彼らは何もかもを壊し尽くす存在だから……幸せも、日常も。
……とりあえず、今夜の宿を探さなければいけない。狩りができない以上、それが一番大切なことだ。雨露をしのいで、ちゃんと休息を取る。それもまた、大事な仕事のうちに入る。
たしか、近くに小さな町があったはず……と思った、その時。
ざわり、と森が震えた。
突然現れた異質な気配に、ロックオンは銃を構えた。
これは『異端』……人でないヒトの気配。それも……ある程度の力を持っているような。
気を抜けば……負けて、殺されるかもしれない。
それだけはゴメンだった。『異端』に負けて終わるなんて、最悪の終わり方は何が何でも。そう、憎い仇に殺されてしまうというのは……。
息を潜め、気配を押さえ、周囲を注意深く伺う。
人と『異端』とでは、圧倒的に『異端』のほうが強い。先手を取られるということは、すなわち敗北を意味する。
相手も、それは知っているだろう。だから、そう簡単に姿を見せて、この有利な状況を壊そうとは思わないはずだ。
……そう、普通ならば。
しかし。
「テメェが都から来たっつー『狩人』か?」
ロックオンの目の前の来、その後ろから一人の青年が現れた。
どうやら……今、森を満たしている気配は、全て彼から発せられているようだ。ということはつまり、この青年が『異端』なのだろう。ならば、狩るべき対象だ。
だが……警戒するでもなく、攻撃をするでもなく、構えをとるでもなく、ただそこに立っているだけの様子に戸惑い、攻撃を躊躇う。今までの経験では、そんなことをした『異端』はいなかった。それに、狩る者と狩られる者という関係性がある以上、それはあり得ない行動だったから。
困惑している自分をよそに、その青年はニッと笑った。
「ちょっくら、話につきあえよ」