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「あ、町だー!」
進んでいた森が少し開け、だいぶ離れたところに、小さかったが露わになった町の姿、
それに瞳を輝かせる妹に苦笑しながら、とん、と背中を押してやる。
「先に行ってもいいぞ?」
「ホント!?ヨハン兄、ありがとっ!」
「ただし、あまりはしゃぐなよ」
釘は刺したが、果たして効果があるかどうか。
走り去るネーナの背中を見て、それから隣で何ともついて行きたそうにしている次男の方へ、視線を移す。
「ミハエル、お前も行きたいのか?」
「いや……てーか、ネーナが心配ってか……」
相変わらずな弟だった。これだから『シスコン』と呼ばれるのに、どうして気づかないのだろう……いや、気づいているか。ただ、気にしていないだけ。
頬をポリポリとかくミハエルに、思わずため息を吐く。今のままでも文句はないが、贅沢を言わせてもらうなら、もう少し妹離れをしてはくれないだろうか。このままでは、ネーナが結婚なんて話になったら、泣きながら式場に殴り込んでいきそうだ。
いや、これは例えであって、本当に彼女の晴れ姿を見ることになるかは甚だ疑問ではあるのだけど。旅をしている身としては、そう。
「……まぁ、いい。行きたければ行け」
「マジで?いいのか、兄貴?」
「あぁ、だから……」
ネーナと一緒に、大人しくしているように。
と言おうとしたのだが、次男はものすごい速さで走り去ってしまい……絶対、聞こえなかっただろう、自分の声は。
もう一度ため息を吐き、ふと、不安を覚えた。
あの二人がそろってしまったら、よくよく考えれば大人しくしていることは無い。いつものように、町一つくらい、簡単に壊してしまうだろう。
それは非常に困る。携帯食もそろそろ底をつくし、たまには弟妹たちに屋根のある寝床とフカフカのベッドを与えたいが……町が無くなれば、どうしようもない。
さて、どうするか……と考えながら、足を速める。ついたとき、町が形を保っていたらいいのだが。無くなっていたら、まぁ、その時はその時。また、野宿をするだけである。
文句は言わせない。何故なら、そうなった場合の原因は、間違いなくあの二人なのだから。