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自分の答えのせいなのだろうか、目の前の『異端』の青年はすっと身構え、発せられる敵意は殺気に変わった。
来るか?と思い、指先に力を込めかけた、その時。
青年は、何かに気がついたかのようにハッと、顔を上げた。
その後振り返った彼の視線の先……そちらには方角的に、近くにあるという町があるはずだ。そんな場所に、何かあるのだろうか。
訝しく思っているうちに、青年は自分に背を向けて走り出した。
そう……『狩人』に背を向けて。
この行動が、どういうものかを、おそらく彼はよく分かっているだろう。
それは「どうぞ、お好きなように攻撃してください」と言っているようなもの。そして、実際にそうされても、文句は出せないような行動だ。
だというのに、彼は背を向けた。
……どうするべきだろう?
答えは考えるまでもなく、自分の中に出ている。引き金を引いてしまえばいい。そうすれば、一人でも『異端』を……仇を……。
しかし、指はどうしても動かない。
これは一体、どうしてなのかと思い、浮かんできたのは先ほどの彼の言葉。
―――テメェにとっての異端は?
―――どんなに弱く、優しく、愛すべき存在でも?
『異端』は狩るべき存在だ。たとえ、どんな性格で、どんな意思を持っていて、どんな生まれで、どんな役割を持っていても。
そう、思ってきた。なのに。
どうしてだろうか。今まで、どんな『異端』はおろか『人間』の言葉でも、ここまで心に届いたものはなかったのに。しかし、あの言葉は確かな影響力を持って、自分の中で渦巻いている。現に、今、強固だったはずの意思が揺らいでいる。
その理由は多分、危険を冒してまで姿を見せてきたこと、それから……さっきの、走り去るときの焦りの表情のせい、だろう。
守りたいものがあって、しかし自分のいない間にそれが危機に陥っているのにきづいて、急がなければと思っている。そんな、顔のせい。
そこまで思って、分かる。
あぁ……そうか。確かに、あの顔のせいで、自分は引き金を引けなかった。
何故なら、あの顔はかつてのロックオン自身が浮かべていたものと、まったく同じだったから。