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「な……何なのよ!」
今、ネーナは酷く戸惑っていた。
町について、一目でいつものように壊したくなって、だから全てを燃やしてしまおうと思っていただけ。
なのに……なのに!
「どうして私の炎が邪魔されて……っ」
「……」
目の前には、黒いロングコートを着た、長い黒髪の子供の姿。
認めたくないけれど、どうやら炎の町への進行を妨げているのは見えない透明の壁で、それを造り出しているのはあの、子供。
それは、ネーナにとって有り得ないことだった。
種族は分からないが、子供が自分と同じように『異端』であるのは間違いない。だからこそ、この炎や壁といった超常現象……魔法を発動させる能力を持っている。
だからといって、かなりの力を持っているネーナと互角に渡り合える……否、圧倒できるという話でもない。どんなものにも優劣というものはあり、彼女はとても高い位置にいるはずだ。邪魔をできるとしたら、自分よりも強い者だけ。
冗談ではなかった。悪魔の中でも高位に位置している自分が、こんな得体の知れない子供に負けているなんて。どこぞの悪夢のようだ。
圧倒されている……その事実を否定するため、子供を叩きのめすため、ネーナは手を前にかざさし、最大出力で炎を生み出した。
いくら強いと言っても、魔法を使い続けるのには限界がある。現象を起こす大小として消えていく精神力には限りがあるのだから。もしもそれを無くしてしまったら、それで終わり。
だからその前に、決着をつけなければ勝ちはない。
だが。
「……ダメ」
子供が、静かに右腕をこちらに向けた。
そしてそれと同時に、ネーナの周りで踊り狂っていた炎の気配が、消える。
「嘘……!?」
「……お願い……」
力と使った余波だろうか。子供の髪が、コートのように、ふわりと広がった。
いや……余波のせい、ではない。
あの子供は、これから『何か』をする気なのだ。
その事実に戦慄する。
まだ……何かできるというのだろうか?それは、あってはいけない。一人につき、使える魔法は一種類。子供の能力がどんなものかは分からないが、これ以上何かできるというのは、異常なことだった。
「……僕の居場所を……これ以上、壊さないで……」
ふと見れば、子供は泣きそうな顔をしていた。