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かろうじて間に合った、というべきか。
『力』を解放しようとしていた彼を、後ろからかっさらい、そのままの勢いで木の枝の上へと飛び乗る。
それからくるりと振り返って、おそらく事の元凶であろう女を、軽く睨め付けた。
「なっ……何よ!」
「命が惜しかったら、この町に何かしようとか思うんじゃねぇぞ」
自分にしては優しい助言をして、彼を抱く手を少しだけ強める。もう、何もしようとするなという意思表明だった。そして、それは伝わったのだろう。彼は無言で胸に顔を押しつけてきた。
彼の手が、ギュッと自分の服を掴んでいる理由は……何をしようとしていたのか、しかけていたのかを、ようやく気づいたというところだろうか。
「……ルヤ…」
「ん?どうした?」
「………静かなところに…」
行きたいということか。
一度枝におろしてやって、それから今度は背負ってやる。
「そこのワガママそうな女。連れがいるなら、そいつらにも伝えとけよ?この町で厄介事を起こすなってな」
「偉そうに言わないでよ!」
「知るか。ついでに言うと、俺から見たら、テメェの方が偉そうだ」
言いたいことを言ってから、後ろの彼を促す。
それを受けて静かに頷いた様子の彼は、すう、と何もない、あるとしても空気程度であろう空間を指さした。
「…扉……」
その言葉と共に、空間に『裂け目』ができる。
この先に、彼が行きたい場所がある……はずだ。
「ワガママそうな……あもうワガママ女でいっか。とにかくテメェ、もう何もすんなよ?」
再度釘を刺しておいて、それから裂け目の中に飛び込んだ。