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……舌打ちをした気分だ。
理由は言うまでもなく、目の前にいる女だろう。
扉の前に座っている少女の、自分と同じ色の瞳がじいっとこちらを見てくるのは、実に不愉快だ。どうしてこんな女とおそろいの目なのだろうか。神がいるとしたら、思い切り殴ってやりたい。
「オイ……そこのけ」
「嫌です。王からお願いされましたから」
表情を変えることなく見返してくる彼女に、さらに苛立ちを募らせる。
やはり、こいつは嫌いだ。
今いるのはアレルヤの部屋。ついついハレルヤが眠り、起きたらソーマがいた。しかし部屋の主である片割れの姿は無かった。つまりはそういうことである。
ちなみに刹那もいる。ただし、彼は熟睡中だ。しばらく起きないだろう。
「王は、あの『狩人』に会わなければ、と言っていました」
「……アレルヤがか?」
「はい。彼が、です」
聞いて、ため息を吐く。
どうしてアレルヤなのだろう。別に自分でもソーマでもいいだろうに。絶対に人選を間違えている……いや、人ではないから『異端』選か?……言いにくいから人選でいい。
「会って、アイツがどんなのかを見るワケか?」
「その通り。王からのお願いで、私は貴方をここから出せません。邪魔するでしょうから」
ソーマもまた『異端』だ。たまにこの館に……否、アレルヤの所に遊びに来る。王という存在に呼ばれたり言われたりすれば、遊びでなくてもやって来る。そして、今回のは後者だったのだろう。時間や言動からして。
「お願いねぇ……王の言うことは絶対ってか?」
でないと、いくら『魔族』……彼らの王である『魔王』に忠実な種族であったとしても、こんな夜中に現れはしないだろう。彼らだって眠りはするのだから。
そう思っていったのだが、ソーマは呆れの表情を浮かべた。
「バカですか?耳はついていますか?誰が命令と言いました?私たちでも拒否は一応できるのです。王が本気でなければ。ですけれど、彼は『お願い』をしたのです。『命令』をできる立場でありながら、です。だからこそ私は自ら従っています」
まぁ、命令でも進んで従いますけれど。あの人の言うことなら。
そう言って笑うソーマを、ハレルヤは複雑な思いで見た。
あの王にそこまでの信頼を置いてくれるのは嬉しいが、それでも彼女のことは嫌いなのだ。素直に、感謝すべきかどうか。