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ネーナが大人しくしていたのは、言うまでもなくあの子供のせいだ。圧倒的な力を秘めていたらしい、あの子供の。
再戦したいという思いはある。このまま負けたまま引き下がるのは性に合わないから。絶対に次は勝ってみせる。それがネーナの意地。強い力を持つ『異端』としての。
しかし、それならばまた、町へと危害を加えようとすればいい。そうすればあの子供は現れる。子供の目的は、この町を守ることのようだったから。きっと。
なのにどうしてそれをしないのかというと、兄たちのことが心配だったからだ。自分だけならまだ良いとしよう。負ける気はないけれど、もしそうなってしまっても自業自得。旅の中で習った『相手の力量を測って行動を』という教えを守れなかったと言うことだ。だけど、兄たちは違う。自分の意地に無関係な、大好きな二人まで巻き込むことはない。
……だけれど、それだけではないのだ。
ネーナの中では子供が最後に見せた、あの泣きそうな顔が、ずっと消えずに残っていた。
どうしてあんな顔をするのだろう?居場所とは、やはりこの町のことだろうか?
思う度に、知りたいという気持ちは強くなる。
だから。
「ねぇ、もうちょっとこの町でのんびりしない?」
「ネーナ!?お前、田舎は嫌いって言ってなかったか?」
「気分だって、気分!」
ミハエルにも、口にしてはいないがヨハンにも、おそらく驚かれた提案。これは、ネーナの偽らざる現在の思いだった。
戦いたいし、知りたい。
そのためには、この町にいないといけない。
「ま、俺はいいけど。兄貴は?」
「かまわない。別に予定と呼べる物もないしな」
すぐに賛同してくれたミハエルに、少し考えてから頷いてくれたヨハン。ミハエルの方はアレルヤという存在もあるからだろうけど、それでも二人がネーナの意見を尊重してくれたことは事実。
「ヨハン兄、ミハ兄、ありがとっ!」
喜びを示すため、ネーナは二人に抱きついた。