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驚きに目を見張るとは、こういうことを言うのだろうか。
どこか冷静に頭の片隅で思いながら、しかしロックオンは確かに驚いていた。
さっきまで彼は眠っていて、だから自分とは今が初対面だ。なのに、どうしてここまで考えるのだろう。アレルヤは、ロックオンのことを。
何も語ってはいない。会って数分しか経っていない。なのに。
どうして、ここまで親身になって?
……そんな中でも一つだけ、言っておきたいことがあった。
どうしようかと考え、言うことにする。ついでに、彼の言った『突き動かしている物』のことも教えようと思った。理由は……分からない。
ただ、彼が『異端』であろうと、聞いてみてもらいたいと思ったのだ。
「俺は優しくない。復讐に生きるヤツが優しいわけ無いだろ?そんなことしても家族は喜ばないし、さらに悲劇を生むだけだ。それを知っていてなお、自己満足のために『狩人』を続ける俺は……そんなものじゃないさ」
「でも」
「どうであれ、俺の中に『異端は敵』っていう考えがあるのは間違いないんだよ」
自己満足だろうと何だろうと、その考えがあるから狩りを続けている。その考えがあるから、どんなに弱い『異端』を狩ろうが罪悪感はない。
「……それでも、僕は貴方を優しいと思いますよ」
しかし、アレルヤはこう言って、静かに微笑んだ。
……少しだけ、泣きそうな顔で。
「復讐だと言いましたよね。家族が喜ばないということは……『異端』が家族を襲ってしまったんですね?だから貴方は……自分の大切な居場所を壊した相手に復讐を誓った……分かるんです、その気持ちが。僕も、もしかしたら貴方のようになっていたかもしれないから……」
そこで一度言葉を切り、アレルヤはすっとこちらを見た。
「僕は、止めてくれる人がいましたけど……彼らがいなければ、それが悪いことだと、自己満足だと気づかないままでいたと思うんです。けれど、貴方は気づいている。自分だけで気づけた……それは、心のどこかで『異端』という存在を、ちゃんと認めていたから。居場所を壊した相手の存在を……それができるのはやっぱり僕みたいなのとは違って、優しいからだと思います」
だから、貴方は優しいですよ。
そう言って、こんどは明るく笑う彼を見て、分かった。
彼は、本心から言葉を紡いでいる。嘘でも大げさでもなく、真摯に言葉を紡いでいた。
そして……気づいた。
人間だろうと『異端』だろうと、何も変わらないと。
悪い人がいて良い人がいるのと同じように、悪いヒトがいて良いヒトがいるのだと。
彼の過去がどういうものなのかは知りようがないが、けれどもロックオンは、心の底からこう言いたかった。
……お前さんも、十分優しいと思うがな。
『異端』が敵という考えは、いつの間にか無くなっていた。