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高校に入る前のお話。
ちょっと昔って感じですか……?
あと一話、続きます。
登場……アレルヤ、ヴェーダ
二月のある日のある時。
その人は一人、早咲きの桜に囲まれてそこにいた。
とても綺麗な長身の女性。身に纏っているのは黒いスーツで、それが雪みたいな肌をより白く見せていた。履いているハイヒールも黒。なのに髪の色は黒……というより闇……か。黒と紫、その間のような、曖昧な色。
思わず見とれていると、くる、と彼女の顔がこちらを向いた。
その女性は慌てるアレルヤに笑いかけ、近くに来るよう手招きをする。
「こんにちは。見たこと無い顔だけど……見学の子?」
近づくやいなや、こんなことを訊かれた。
学校の関係者かな……?
そう思いながら、訊かれたので答える。
「はい、そうですけど…」
今日はこの途美学園のオープンスクールの日で、「行ったら何か高価いモンもらえるんじゃね?私立だろ、そこ」というかなり不純なハレルヤの意見があったのでアレルヤはここにいる(ちなみに、もらえたのはペンを数本、ファイルを一つ、焼き菓子を一袋、缶ジュースを一本)。つまりは付き添いというわけだ。双子の兄は問題をよく起こすから、お目付役がいないとあらゆる意味で不安なのだ。
「ここに進学希望?」
「いえ……兄の付き添いです」
先のように、アレルヤが来た理由はそれだけで、進学する高校はもっと家から近い公立校にしようと考えていた。
それに、この学校はレベルが高いのだ。アレルヤも今の学校でまずまずの成績をとってはいるが、この学校で通じるレベルではないと思う。それだけ凄い高校なのだ。ハレルヤなら入ってもやっていけると思うけれど。
「そっか……ねぇ、話変わるけれど、この桜たちってどう?いつもは三月の最後とか、とりあえず新入生が来るとき咲くんだけど、いつもよりも早すぎる開花なの」
「……桜?」
唐突すぎる話の転換に戸惑いながらも、顔を上に向ける。
満開の桜。綺麗で儚い。
きっと、すぐに散ってしまう。
「……可哀想だと思います」
「どうして?」
彼女の、楽しそうな声音。
何が楽しいのかと不思議に感じながら、視線を今度は幹に。
それから少し歩いて行って、その幹に手を当てる。
「だって……こんなに早く咲いたら、新しくここに通う人たちを見ないまま散ってしまいます。今まではずっと、見てきたんでしょう?だったら、なおさら残念がるんじゃないかなって、そう思ったんです」
「へぇ……おもしろい考え方ね」
幹に触れている手に、細い手が重ねられる。
その手はほんのりと温かい。
「君、気に入ったわ。ね、どこの中学生で何年生?」
「仁賀中の三年ですけど……」
「ということは、来年高校生か……」
ちらりと顔を向けると、彼女は何かを考えているようで、もう片方の手を顎に当てて真剣な表情を浮かべていた。
「そういえば、お兄さんの付き添いって」
「兄も三年なんです」
「てことは、双子?」
「はい」
「そうなの……」
「ヴェーダ!こんなところにいたんですか!」
突然、大声が響いた。
「あっちゃー……見つかっちゃった……」
いたずらがばれた子供のような顔をして、彼女が呟く。
それから彼女は視線をアレルヤから逸らし、別の方向に向けた。
アレルヤもそれにならう。
そこにいたのは、紫の髪の眼鏡の人。
ぱっと見では男か女か分からないほど容姿がいい。けれども、さっきの声からして多分、男だろうと推測できる。
「ティエリア、どうして分かったの?」
「あなたの考えることくらい分かります。いい加減式典に出てください……ん?そこにいるのは?」
歩み寄ってきたティエリアと言うらしい生徒は、アレルヤの方に顔を向けて目を細めた。
「仁賀中の三年生なんですって。えっと、名前は……」
「アレルヤです。アレルヤ・ハプティズム」
「そう、アレルヤっていうのね」
「ヴェーダ……」
ティエリアが、呆れの表情を浮かべてヴェーダを見た。
「普通、最初に名乗り合うものでしょう?」
「はじめは、少しだけ話そうと思ってただけだったのよ」
「あなたの気まぐれは相変わらずですか……アレルヤ・ハプティズムといったな。君の方はどうしてこんな所にいる」
言われてはっとする。当初の目的を忘れていた。
「僕、兄を捜していたんでした……早く見つけないと心配しているかもしれません」
「そうか、なら早く行けばいい」
「はい。では、失礼します」
ヴェーダの手から自分の手をするりと抜き、ペコリと礼をしてダッと走り出した。
だから、彼は知らない。
「アレルヤ、か。いいわね、あの子なら……生徒会が務まるわ」
そんな彼の後ろ姿を見ながら、ヴェーダがポツンと呟いた言葉を。
その日から数日後、アレルヤとハレルヤの元に途美学園からの「この学園に入るように」、ついでにアレルヤの元にはもう一つ、「生徒会に入ること」という旨の連絡が来たのだった。
出会いは、どこに転がっているか分かりませんね。
途美学園の生徒会メンバーは、ヴェーダの判断とかで決まるので。
さすがオーナー!…?