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多分、これって真面目な話。
シリアスとか、そういう区分はよく分かんないけどね…。
06.結果オーライ
ミッションが終わってからずっと、アレルヤは落ち込んでいるような顔だ。自室に戻った後も。いや……落ち込んでいる『ような』ではなくて、本当に落ち込んでいる。彼の心と隣接する場所にいるハレルヤには、それが手に取るように分かった。
『なぁ……』
「……何?」
自分の呼びかけに、アレルヤは微笑んで答える。
一見すれば、普段となんら代わりない。だが、確かにアレルヤは落ち込んでいた。
原因は分かっている。自分の、あの行動のせい。
アレルヤは一機で紛争に介入していた。ほかの機体はメンテ中だったり、他のミッションに出ていたりと、使うことができなかったらしい。
それはともかく、キュリオスを駆って片割れは紛争の起こっている場所へと向かった。
そして、ハレルヤがやらかしてしまった。危なっかしいアレルヤが見ていられず、ついつい体のコントロール権を奪って、思う存分暴れてしまったのだ。
結果、敵側の被害は拡大。死ななくても良い相手も命を落とした。
つまりは、そういうことである。
ハレルヤも、少しやりすぎた気がしたので反省はしている。あと僅かばかり手を抜いていれば、アレルヤだってここまで悲しみはしなかっただろう。
間違ったことをしたとは思っていない。敵は所詮敵であり、情けを掛ける必要など皆無だ。そんなことをして生かしておいて、次の機会にその相手に殺されてしまったら元も子もない。自分が危険になる可能性は、一%でも減らしておきたいという考えは、誰だって抱くに違いないものだ。
が、先にも言ったように、ハレルヤはやりすぎた。
ある程度の力量を有している小隊を二つも壊滅させ、その上生存者を一人も出していないというのは流石に。
人の命を奪うことを厭う、アレルヤがここまで落ち込むわけである。
『悪かったって、な?』
「別に……気にしてないよ?」
……これはヤバイ。重傷だ。
未だに微笑みを浮かべているが、その顔には憔悴の影が色濃く浮かんでいる。
いつものように怒ってくれた方がまだマシというもので、ハレルヤはどうやって立ち直ってもらおうかと必死に考える。
そもそもの原因は自分だ。自分が何とかしなければ。
「ねぇ……どうして急に、替わったの?」
ふいに、アレルヤが口を開いた。
『は?』
「ほら、どうしてあの程度の敵で君が出てきたのかなって……僕でも、倒せないほどじゃなかったよ?」
『そりゃ……』
言いかけて、言葉を続けるか悩む。
全て、言ってしまおうか。
そして、結局。
『お前、敵に照準合わせられてたの気づいてたか?』
話すことにした。
「え?あぁ……一応は」
『あれ、下手したら機体を掠ってた』
「でも、ガンダムの装甲は…」
『そのくらいじゃ壊れないって?知ってるよ』
だけれど、やはり気持ちの良いものではない。
アレルヤに銃口が向けられていると分かった瞬間、ハレルヤの中にあるスイッチが入ってしまったのだ。
片割れに危害を加えようとする相手なんてどうでもいい。ハレルヤにとっては全員消えてしまうべきであり、死んでしまうべきだった。
何故なら、ハレルヤはアレルヤを守るために存在しているのだから。
それに何より……。
『……なぁ、アレルヤ』
「…何?」
『お前さ……消えたりしないよな?』
あの戦闘中、一瞬だけ片割れに恐怖を抱いた。
照準を合わせられたときか、相手が向かってきたときか、何時だったかは分からない。しかし、本当に一瞬、アレルヤが彼自身の命に無頓着すぎる気がした。滅びを受け入れているような気がした。自分の安全に、無頓着すぎる気がした。
大切な片割れが消える。
それは、何と恐ろしく辛いことだろう。
だが、アレルヤはその恐怖をあっさりと打ち消した。
「何言ってるの、ハレルヤ。僕は消えないよ」
『はっ、どうだかな。ま、消えたがっても俺がさせねぇけど』
「ふふふっ……頼りにしてるよ。あぁ、でもそれなら……」
つい、と彼の目が自分に向けられたような錯覚に陥る。
実際はそんなことはなく、意識が近付いてきたということなのだろうが。
『ん?』
「ハレルヤも、消えたらダメだよ?」
すっかりいつも通りに戻ったアレルヤに安心して、ハレルヤも笑う、
『当然だろ。俺は何があってもお前の中にいる』
「ずっと一緒?」
『バカかお前』
ため息を吐いて、ハレルヤは口を開いた。
『俺はお前で、お前は俺。どっちかが生きてたら、どっちも生きてるってことなんだよ。それはイコール、いつまでも離れねぇってことだ』
「……それも、そうだね」
しばらく黙っていたアレルヤが、ポツリと、呟くようにそう言った。
その答えに満足し、ハレルヤは口を開く。
『だろ?で、ところでアレルヤ、お前晩飯まだだろ。腹減ってねぇの?』
「え……あ!すっかり忘れてたよ!」
時計を見ると、すでに時間は十時を回っており。
夕食を食べるような時間帯ではなかった。
『今夜はメシ抜きだな』
「だねぇ……」
やっちゃったね、と苦笑する片割れ。
しかしハレルヤは、むしろ満足げな気持ちであった。
こうなった理由はいただけないが、ミッション終了後から今まで、アレルヤを一人で独占できたのだから。
『結果オーライ』を生かし切れてない気がするんだ。
でも、何となく書きたいと思うことは書けたから良しとするんだ。