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なんて安直な…と、思わなくもないけど。
07．ポップコーン
スクリーンに、良く見知っている機体が映っている。
ここはどうやら映画館らしくて、ついさっき、上映が始まった。
毎日見ているから、別にいまさらどうこう……というものではないけれど。
何となく、その映像を見ていた。
青い機体が、敵を切り裂く。
緑の機体が、敵を狙う。
白い機体が、敵を破壊する。
橙の機体が、敵を仕留める。
よく見知っている、仲良しな機体たち。
そんな、スクリーンに映っている彼らのことを、じっくりと見ている人。
彼は真剣な面持ちで、だけど憧れに近い何かを持って、じっくりと見ていた。
金髪のその男性は、こんなところだというのに、スーツを着ていて。
…これは、映っている彼らに対する、何らかの敬意？
決して、適当な気持ちで付き合ってはいないと、そういう態度を示している？
だとしたら、嬉しい気もする。
見たところ、彼はあの機体たちの属する場所の人間ではない様子。
ならば敵かも知れないけれど、それでも、ちゃんと見てくれる人がいるのは嬉しい。
きっと、彼らも喜ぶ……と思う。
そこら辺は、男性の性格とかもあるかもしれないから、ハッキリとは言えないけど。
ポップコーンの入っている容器に手を入れて、一粒二粒取り出す。
映画館といえば、これ、だけど……買った記憶も、持っていた記憶もない。
いつの間にかあった、ちょっと謎なコレ。
イメージの具現とかいうもの、だろうか？
…まぁ、どうにしろ、残すのももったいないから食べるけど。
にしても……容器に山盛りのコレが、果たして一人で食べきれるかどうか。
少し考えて、それから隣の男性に声をかける。
ちょっとだけ、ポップコーン、いりませんか？と。
突然の言葉に驚いたのか、一瞬だけこちらを見て止まった彼。
しかし、すぐに笑みを浮かべた。
「では、いただこうか」
容器に手を伸ばす彼に、一つ、質問をすることにした。
どうして、彼らのことを見ているんですか？
彼ら……スクリーン上の、彼らのこと。今は、青い機体が映っている。
「彼らには、私の心を奪われてしまってな」
そう言う彼は、本気に見えた。
というか、間違えなく本気だ。
こういう人もいるのかと、何となく納得してしまって。
それから、まだポップコーンのたくさん入っている容器を、彼に渡した。
「どうかしたのか？」
訊いてくる彼に、そろそろ行きますから、と答え、席を立った。
また、会うかは知らないけれど…お元気で。
言えば、彼は微笑んでくれた。
「あぁ。名も知らぬ君も、元気でいてくれ」
劇場を出る前に、ふっとスクリーンを見直せば。
そこには、橙の機体が映っていた。
一番仲良しなその機体に見送られて、アレルヤは映画館から出て行った。
今回は……言わなくても分かりそう、だけどグラハムさん。
ていうか、スーツ姿以外の彼の姿（軍服除く）が想像できません。…シャツ姿？