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かつてないほどのこじつけ。
今回はティエリア。
03.青春の味
一体、この大人たちは何をしているのだろうか。規定量の仕事が終了しているのは、見たら直ぐに分かる。目はそんなに悪い方でもないし、気づけないほど愚かでもない。ならば何も言うことは無いと人は言うのだろうが、終わったのなら自室に戻ればいいだろうというのがティエリアの意見である。次に備えてしっかりと休養を取る。仕事人としては当然の行動だろうに。
あらゆることが完璧でなければ気に入らないこの身としては、彼らの行動が、ハッキリ言うと理解しがたいのである。何時、彼らの力が必要となるとも分からないというのに、よくもまぁここまで脳天気な。酒に酔って、確実な仕事が出来るとでも思っているのだろうか。だとしたら、何という酷い思い上がりだろうか。CBのメンバーたるに相応しくない。
「全く……貴方たちは大人でしょう。子供の見本になるべきではないのですか?」
しかしそれでも、仕事は終えているのだ。文句の言い様はなく、ただただ溜息を吐いてぼやくに止めるしかなかった。本当はこの憤懣をぶつけたかったのだが、さすがに一仕事終えた彼らに鞭打つようなマネは躊躇われる。何より、彼らはCBの大切な歯車の一つだ。いなくなられては困る。
不機嫌な表情でそこに立っていると、技術者の一人が顔を赤くしたまま笑った。
「んな堅いこと言うなって、な?てーか、ここに子供なんてお前しかいねーよ」
「堅くありません。貴方がたが羽目を外しすぎなだけです。あと、俺しかいなかったとしても、最低限見本になるという義務は守るべきでしょう?」
酔っぱらいの相手を真面目にする気はない。暖簾に腕押し、糠に釘。無駄な行為を行うことは、ティエリアの望むところではないのだから。そんな事に労力を使うくらいならば、部屋で一人黙々と本を読んでいた方がマシという物だ。他のメンバーからは暗いだの、もっと体を動かせだの口うるさく言われているが、知識を得るには有効な手段だし、身体能力の方はトレーニングを行っているので支障はない。彼らの言葉は、的に当たるどころか掠りもしていないのだった。
そんな自分がここに来たのには、当然理由はある。
「それよりも、報告書です。受け取りに来ました」
「あぁ、お使いか?」
「ミッションです。貴方たちが何日か徹夜しているのは知っています。少しくらいは負担を減らしてやれと言われましたので」
ティエリアとしては、自分で出しに行けと怒鳴りたいところではある。だが、徹夜続きの彼らにそれを言うのかと訊かれると、返答に窮するわけだ。
彼の元へと歩み寄り手を差し出すと、ポン、と報告書をのせられた。
いくら裏方とはいえ、いや、だからこそこういう報告は必要だ。実行するにしてもメンテナンスが出来ていなければ、機器は性能を十分に発揮することは出来ず、ミッションにも望んだ成果を出せないかも知れない。いくら今は準備期間とはいえ、マイスターも決まっていないとはいえ、ここで手を抜いていては数年後の奮起の際に事故が起こる確立がある。そんなこと、あったら全てが台無しだ。
「確かに受け取りました」
「確かに渡したぜ。あ、そうだ」
「……?」
思いついたことがあるらしい。彼がちょっと待てと身振りで示したので、ティエリアは大人しくそこに立っておく。様子からして緊急ではなさそうだが、だからといって去っていくというのもどうかと思われた。
こういうところ、まだまだ甘い。
反省していると彼がまた、新しい物を差し出した。
「ほい、これやる」
「これは……?」
「飲んでみろって」
あったのは紙コップ。中には薄く色づいた液体が入っている。
どういうことかは把握できなかったが、彼と、さらには彼の周りの他の技術者たちまで飲め飲めと言うので、やむなくそれを流し込む。
口の中に泡のはじけるような刺激、相容れない苦みが広がる。
液体の正体に気付いた瞬間、ティエリアはそれと体とを大きく離していた。
「これは……酒?」
「そ。チューハイだよ。うまいだろ?」
「そういう問題ではありません!俺はまだ未成年で、飲酒は認められて……」
「細かいことは気にすんな」
「……っ」
本当に、酔っぱらいとは話が通じない。
苦々しく思いながら、ティエリアは一つ決心していた。
今後は一切、酔っぱらいの相手はしない。何をされるか分かったものではないから。
青春=苦いんじゃない?
…という皆様からの意見によって、こういう結果になりました。
こじつけ、なんてものでは語れないように思えますが、まぁ、許してください。