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「ハレルヤ、どういうことか…状況説明、頼めるか?」
「私、も……聞きたいんだけどっ」
「今は黙って走れ。アイツが止まったら教えてやる。つーか……疲れるなら喋るなよ」
それは確かにハレルヤの言うとおりだ。全速力で走りながら何かを話すというのは、想像以上に辛い……のにどうして彼は息切れ一つせず、いつも通り話すことができるのだろうか。もう『異端』だからとかいう話ではない。同じ種族ではないが『異端』である隣のネーナも軽くバテているというのに。
黙ることにして、ふと、一番困惑しているのは刹那だろうと思った。突然、先ほどまで戦っていたらしい青年に腕を掴まれ、そのままダッシュだ。彼の方が混乱しているに違いない。
「……そういや、あのガキ、こっちに出てから何か言ってなかったか?」
「っていうと……?」
「あのヒゲ面の男見て何か言わなかったかって訊いてんだ」
喋るなと言っておいて質問をしてくるのは……他意はないのだろう、多分。元よりこういう性格……だとしたら、きっと日常生活は大変だ。こんなハレルヤと、あんな性格のティエリアが同じ屋敷内に住んでいるのだから。
そんな彼らと一緒に住んでいるアレルヤに同情して、刹那が何か言っていたかと、先ほどの光景を思い返してみる。
「俺は……覚えて、ない…けど」
「あ!私は覚えてるっ…」
ネーナが、ぽんと手を打った。汗だくになっているのに、結構余裕そうに見える。
少しだけ……本当に少しだけ『異端』の、人間よりも高い運動能力が羨ましく思えた。
「何て言ってた」
「えっと……『アリー・アル・サーシェス…?』って……驚い…た、みたいに」
前言撤回。全然余裕そうではない。手を打ったのはクセのような物らしく、それによって余計な体力を使ってしまったのか…さっきよりも辛そうだ。
そろそろ止まらないのか、と視線を前方に転じてみれば、いつの間にかそこに青年と刹那の背中は無かった。どうやら、はぐれてしまったか、置いて行かれてしまったらしい。
「ね……私は、答えたんだし……アンタも一つ、教えなさいよ」
「……しゃーねぇな。できる範囲で、一つだけっつーんなら」
「あの刹那を連れて行った人……町に出てくる小さな子供と関係あるの?」
立ち止まって静かに問いかけるネーナの隣に、ロックオンはゆっくりと収まった。
それは、自分も気になっていた。
彼女が言っている『小さな子供』というのは、アレルヤを連れて行ってしまった、あの黒コートの子供のことだろう。
自分は一回しか子供の姿を見ていないが、しかし、それでもあの青年と子供は似すぎているように感じた。親戚、というレベルではなく……そう、まるで『同一人物』のような気がした。バカな話、だとは思うが。
「親戚?家族?兄弟?親子…は無いよね。アンタは知ってるんでしょ?あの二人の関係」
「生憎だな、ナマイキ女。その質問には答えらんねぇよ」
くるり、と振り返ってハレルヤは言った。
何をバカなことを訊いているんだ、という表情で。
「アイツが良いって言うんなら話は別だけどな。ま、残念なことにまだ知られたくないんだとよ。自分のことを諸々とな。あぁ、でもま、」
次に顔に浮かんだのは苦笑だった。
「連れてかれたあのガキには今頃、色々とバレてんじゃねぇの?」