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 今日は来客が多い、と思った。実際は自分も来客であり、人のことをそう呼べるような立場ではないと知ってはいるが、それでもその単語が一番似合うだろう。彼女たちはいかにも『訪れる』といった風だった。

 二人の内片方は、先ほども出会った白髪で金眼の少女。もう一人は……見たことはない。桃色の髪の大人しめな少女だった。どう見ても接点のない二人。共通点を強いて言うなら、それはやはり少女と言うことくらいだろうか。

「あの……何か用ですか?」
「お聞きしたいことが有ります」
「……聞きたいこと?」

 自分たちに訊くことと言えば、それは当然あの傭兵集団のことだろう。あるいは、そこにいたときの何かについて。

「それは?」
「あそこで、何かをされませんでした?」
「何か……?」
「魔法か何かを掛けられなかったでしょうか?」

 言われ、ピンと来る物があった。
 振り返ると、後ろでルイスが不安そうな顔をしていたが……こくりと頷いた。話せ、ということらしい。
 別に隠すことでもないが、それでも彼女のことだったので躊躇っていたのだが……いらない気遣いだったようだ。

「心当たりは有ります」
「やはり有るんですね」
「はい。ルイスの、声です」

 前置いて、沙慈は続きを話す。
 捕まった後、人質として沙慈がいたがそれでは足りないと、貴族らしい人間の従者がコッソリと、ルイスの声を奪っていったこと。何をどうやったのかは不明だが、それが為されたということだけはハッキリと分かった。魔法を掛けたらしい本人がそう言っていたし、何より彼女はそれ以来話すことはなくなった。できなくなったのだ。

「……『奪う』力?厄介ですね……」
「厄介?」
「えぇ。一番、手に負えない能力です。ですよね、フェルト」
「その通り…だね」

 フェルト、というらしい桃色の髪の少女が頷く。
 どういうことかと首をかしげていると、白髪の少女が口を開いた。

「奪われた場合、その後については幾つかのケースがあります。例えば、魔法を掛けた本人が死んで、あるいは再起不能になって、そうすれば奪われた物が返ってくるケース。それから……どうなろうと、返ってくることがないケース」

 その言葉に、沙慈は、ようやく事の重大さを悟った。
 少女はつまり、ルイスの声が二度と返ってこないかも知れないと言っているのだ。これからずっと、彼女は言葉を話すことが出来ないかも、と。

「そんな……」
「まぁ、あくまで可能性の話です。もしかしたら、知っているかもしれない人はいますが……探しに行かないといけませんね。知らない可能性の方が、高いのですが」
「それって、ティエリアのこと……?なら、私も手伝う。どこにいるか分からないし」
「あ、なら僕たちも」

 後ろで黙っているしかないルイスを促し、沙慈は立ち上がって部屋から出て行く二人を追った。
 

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