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「例えばなんですけど、子供特有の残虐さっていうのを、一時的にでも取り上げることが出来たら、貴方はどうします?取り上げてみますか?」
「どうしたんだよ、いきなり」
「いえ。少し気になって」
クスリ、と彼は笑う。
「で?貴方だったらどうします?」
「状況によるな。そうしなきゃいけない時もあるだろうし、逆にやってはいけない時だって有るだろ。要は臨機応変にってことだ」
「あぁ、なるほど」
「じゃ、今度は俺から質問だな」
何度も頷く彼に、こちらから問い返す。
「相手の見えない復讐ってのは、無意味だと思うか?誰が仇か分からない上に、ソイツがまだ生きているとも断定できない。そんな相手を追いかけるってのは」
「……その話は決着が付いたんじゃなかったですか?」
「いいだろ?ちょっとだけだ」
あくまで冗談めかしてそう言う。
「無意味、ではないと思いますよ。その人自身の問題ですから、納得するまで行動するしか、無いとしか言えませんね。けれど、止めてくれる誰かがいたら、やっぱり止めるべきだとは…で、急になんですか」
「そりゃ、こっちのセリフだろ?お前こそ何だよ、いきなり『子供特有の残虐さを取り上げる』って。話の前後が繋がってないだろ」
「ですよね…」
困ったような表情を、彼は浮かべた。
「けどまぁ、今でもないと、こんなことは訊けないでしょう?他の三人がいない今でもないと。あまりに個人的すぎるし、大多数の人の中で話すようなことでもない」
「そりゃそうだ」
五人だった自分たちも、今は二人と三人に分かれている。理由は酷く簡単で、五人一緒というのは目立ちすぎるからである。敵は多いのだから、できるだけ目立たない方が望ましい。だからといって一人ずつ、というのは土地勘がないメンバーが二人(うち一人は自分)ほどいる以上、好ましくはないだろう。
そういうワケで、自分たちは二人だけで行動していた。
だからこそ、こういう質問のやり取りが行われたのだろう。あまり、たくさんの人ビトの中で話したい内容ではない。
「……が、それでもお前さんのは脈絡がなさ過ぎだろ」
「ちょっと昔、色々あったのを思い出して……あぁ、あの時あれが無ければ、有れば良かったのにだとか、ついつい考えちゃうんですよ。昔に戻れたらなって」
「で……その『色々あった』の中に、残虐性の話が関係するワケか?」
「そう考えてもらって、間違いはないです」
どんな過去だと、彼の子供時代が心配になってくる。
「ちょっと前から思ってたが……何でそんなに、踏み込んだ感じの話をしてくれるんだ?俺たちは最近会っただけの関係だろ?」
「んー……それは、実はわりと僕も不思議なんですけど……どうして話しやすいのかな……お兄さんみたいだから?」
「…疑問系かよ」
「分からないんですから、しょうがないですよ」