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「あー、何で俺が子守なんざしねぇといけねぇんだよ……どうせなら、アレルヤと一緒のチームが良かったんだっての」
「それはこちらのセリフだ、ハレルヤ・ハプティズム。俺だってお前と共に行くのは不本意だが、決まった以上は仕方がない。それと、あまりグダグダと言うな。煩い」
「ていうか、子守って何よ子守って!私たちはそんなに子供じゃないってば!」
「……テメェら、黙らせてやろうか」
半眼になって、ちらりと後ろの二人を睨め付ける。
絶対に、彼らには年上を敬う気持ちが欠けて……というか無い。それはもうミリどころか、ミクロの世界レベルでも見つからないだろう。あぁ、あるいは原子レベルか。『敬う』という思考回路がインプットされていない彼らの頭は、間違いなく失敗作だ。
僕はロックオンと行くね、と言って、こちらの返事も待たずに出発してしまった片割れに、少々恨みがましい思いを抱く。といっても本当に『少々』である。ハレルヤがアレルヤに対してそういう事を本気で思うことなど、ほとんど皆無なのだから。
「で、俺らはアリーん所に行きゃいいんだろ?で、時間を稼ぐかそれとも潰すか」
「……潰すに決まっている」
響いてきたのは、低く暗い声。
……やはり、刹那はあの傭兵を憎んでいるようだ。
無理もない話だが、今はもっと冷静になってもらわなければ困る。今回はチーム戦、と言ってもあながち嘘ではないのだ。彼一人が熱くなって、こちらが迷惑を被るのは遠慮したい。アレルヤならともかくとして、こんな子供と心中はごめんだ。だからといって放り出せるほど片割れと親しくないわけでもなく。
何というか、そう、面倒。それが一番、自分の中での彼という存在を正しく表している。放っておけるほど仲が悪いでもなく、ずっと世話を焼いても良いかと思えるほど親しくもなく。結構、彼は曖昧な位置にいるのだ。
対して、もう一人の子供……ネーナはどうだろう。
これは分からないと言う他ない。知り合ってまだ、日が短すぎる。彼女の人となりを正確に知るにはもう少し、時間が必要となるだろう……知りたいと思っているわけではないが。どうしてわざわざ、そんな物好きがするようなことを。
その内、必要になるかも知れないが、その時はその時。そういう状況に直面してから考えればいいのだ。今から考えたところで意味はない。どんなことにもイレギュラーがあり、したがって、それを含むであろう状況を想定するのは不可能なのだ。想像もつかないからイレギュラーなのであり、それ以上でも以下でもないのだから。
だいたい、そんな物が起こると推測できたとして、ならば取り返しの付かない事などという物は現れるワケがない。全てを予想できれば後悔も、懺悔も、悲哀も、何もかも、あるはずがないのだ。いや……在ってはいけない。
「……ねぇ、さっきから気になってたんだけど、刹那……どうしてその傭兵の事になると、そんなに暗くなるの?」
「暗……」
「だってそうでしょ?」
「まぁ……否定はできないのか…」
否定しろよ、と、後ろから聞こえてくる会話にツッコミを入れる。そこはちゃんと首を横に振るべき箇所だろうに。というか、暗いとは違う。あれはただ単に、復讐したいと思っているだけだろう。それを望む負の感情が、暗く見せているだけだ。多分。
「で、どうして?」
「アイツは……あの男は……」
立ち止まった気配を感じ、ハレルヤも足を止めた。
振り返ってみると、丁度その時、刹那が静かに言葉を紡いだ。
「俺から多くを奪い、俺が多くを得る機会を与えた男」