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一人は『二人』
『二人』は一人
けれど
今だけは『一人は一人』
11.一人旅
そこには誰もいなかった。
いるのはアレルヤ、一人だけ。
風邪が砂を巻き上げる丘の上、一人で歩いていた。
…本当に、貴重な体験。一人だけ、というのは。
いつもならハレルヤが内にいて、一人に見えても二人だったから。
これも、夢の中だからこそ。現実では、有り得ないこと。
砂の舞う空を見上げながら、足を進める。
ここは、誰かの夢の跡地なのだろうか?
それとも、始めから夢の中にあった空き地?
どちらでもいいと思う。どっちにしろ、ここにこの空間があるのは変わらない。
水のない不毛の大地。まるで砂漠のようで、だけれど暑さは感じない。
足を止めて、後ろを振り返る。
足跡があったはずの場所にはもう、何もない。
広がっているのは、まっさらな砂の地面だけ。
あぁ……何だか、自分が今までしてきたことがかき消えてしまったみたい。
決してそんなことは無いと分かってはいるけれど。
目に見えて結果が残らないのは、とても不安だ。
考えることが暗い方へと向かっているのに気づいて、軽く頭を振る。
……立ち止まっていても仕方ない。進もう。
体の向きを戻して、また、足を動かし始める。
今度は、足元を見て。
吹いている風のせいで、様子が定まらない砂の様子。
ある時は波のようで、ある時は幾つもの山のよう。
止まることを知らないその様子は、あるものを思い出させる。
そう……即ち、世界。
世界は止まらない。変化を続ける。良い方にも、悪い方にも。
もしかしたら、ここは世界が見る夢の中かも知れない。
世界は夢見ている。変化を。
良い方にだろうと、悪い方にだろうと関係はない。
ただ、変化を求める。
それこそが、世界という存在がある理由なのかも知れない。
なるほど、やはり夢の中には跡地も空き地もないのだ。
それぞれが誰かの夢。それを形取っている。
…この考え、どう思う?
と、いつもの調子で聞こうとして……思わず苦笑する。
片割れは、今は内にはいないのに。ついつい癖で。
一人だけというのも新鮮で良いけれど。
一人だけというのは結構寂しい物だと感じる。
そんなことを思いながら。
しばらく立ち止まり、砂に遮られる視界に空を映していた。
空は、とても青かった。
それは、そう。悲しい争いが無くなったと思えるほど清々しく。
(醜い諍いが続いていることが隠せないほど透明で)
今回は誰でしょう……というのは無いですね。世界。
少なくとも、世界は停滞を望まないと思うのです。変わり続けてこその『世界』なのではないでしょうか。
ほら、今も。一秒後は一秒前の世界とは、小さい差であろうと確かに違うのです。