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「あの……今更ですけど、強引に連れてきてしまって…その、すみません」
「別に良いって。にしてもあの時のお前、迷いなんて一つもないって感じだったよな…びっくりしたぜ」
「まぁ…無くなったのは『善悪観』と『躊躇い』と『心配』ですから」
「……?」
「こっちの話ですよ」
首をかしげる彼にこう返して、今は別の行動を取っている片割れの事を思う。
彼の意見も誰の意見も聞かず、こうしてロックオンに一緒に来てもらって……かなり申し訳なく思ってはいるが、だからといって間違った行動を取ったとは考えていない。
これからどうなるか分からない以上、自分とハレルヤは離れておくべきだ。それに、刹那はアリーに当てた方が良いのでこちら側は論外。ここでそうしなかったら、刹那の心の中にはモヤモヤが残り続ける。消すのには絶好の機会とも言えるだろう。ネーナはあちらにいた方が良い。人数が多い方が安全だろう。
そんな中でロックオンを連れてきたのは、一人で行くのはマズイだろうという思いと、ただ単に『誰かと一緒にいたかった』からである。相も変わらず一人が怖いというのは……何の問題もないけれども、どこか気恥ずかしいというか。一人で飛び出しておいて、誰かと共にいたいというのは矛盾している気がするけれど。けれど、何かが失われると、その直後はどうしても一人でいることが不安になるのだ。
「俺らが狙うのは、人間じゃない方だったか?」
「えぇ。あの傭兵も手強いですし、引き離して倒せば良いと思うんです。二人でいられると、タッグを組まれる可能性もありますし」
「一人と一人より、二人の方が手強いってか……ま、性格とか相性とか、色々と要因はあるんだろうが、本当にそうなったら困るよな。逆に弱くなってくれたら楽なんだが」
「ご都合主義ではいられませんから」
ぼやく彼に、肩をすくめて見せる。
もしもの時を考えて行動しないと足下を掬われるし、もしもを考えなかったら失敗する。だから何もかも、先に手を打っていくべきなのだ。出来る限りは、全てに。
「あぁ、そうだ。僕からの贈り物」
「ん?あの白い銃弾のことか?」
「えぇ。あれは普通の物よりも強いだけでなくて、魔とかを打ち払ったりもできるはずなので、良かったら使ってください」
「魔って…どこで使えってんだ?」
「例えば、ですか?そうですね……」
こういう時かな、と。
アレルヤは、ロックオンの肩をするりと撫でた。
その後は、あっと言う間。
驚き目を見開いた次の瞬間に、彼の体は崩れ落ちていた。死んでしまったワケではなくて、気絶しただけ。そういう風に『力』を送り込んだ。さすがに、ここから先には付いて来て欲しくないという理由だけで他人を殺したりはしないから。場合によっては傷つけることは、無いとも言い切れないが。
倒れた彼の体を引き摺って、近くにあった木の幹にもたれ掛からせる。道のど真ん中で眠るというのは変で……彼のせいではないだけに、そういう目で見られてしまうのは可哀想というか。いや、まぁ木にもたれて眠るという所でも、充分妙かも知れないけれども。
とりあえずこれでいいか、と思い、途端に強い目眩に襲われる。
思わず彼のもたれていない木に手をつくと……その木は、一瞬にして干涸らびた。枯れた上に、水分が全て蒸発してしまったように。
「……うそ…早くない…?」
想像もしなかった事態に呆然とするが、すぐに気持ちを切り替える。
早く事を終わらせて、ゆっくりと休もう。そうしたら、きっと元通りになる。
きっと……やり過ぎさえ、しなければ。