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皆殺しにするのを決めたのは良いものの、しかし、一体彼らはどこにいるのだろうかと、そこから躓いたのは計算外だった。いくらあの人と繋がっていても、そんな細かいことまで分かることは無い。面倒な話……とは思うが、こればかりはしょうがないのだろう。できないことは、できない。それだけの事。
とりあえず、あの人がいるのだろう森の方へと向かう。そちらには恐らく、彼の仲良しな人間だとか異端だとかが数人いるはずで、町中で行動を起こすよりも騒ぎには為らず、事を容易に運べるかもしれないと考えたのだ。実際にどうなるかは見当も付かず、出会った対象によっては返り討ちも、まぁ……有り得なくはないだろう。あの人自身に会ってしまったら言うまでもないし、それからアイツに会ってしまっても変わらない。
さすがに、つい先ほど出会った眼鏡のアイツはカウントに入れなくても良いだろう。来ることが出来たとしても、それはもう少し先の話だ。世界に裂け目を作って来る、というのも出来る者がいなければやりようもない。アイツと一緒にいる誰かは、どうやら物を凍らせる能力を持っているようだから、考えの外に置いていても良いはずだ。
どうやって殺すべきだろう?やはり、あの人の目の前でやるべきだろうか。それとも、それでは邪魔が入る可能性があるから誰もいない所でこっそりと、だろうか。どちらにしろ死体を見せた方が良いだろうから、移動の手間も考えれば前者の方が楽ではあるが……。
殺す手段は?……じわじわと嬲っていきたいから、急所を一突きはダメだ。死が近付いていることを知らせたいから、氷づけてもいけない。意識が朦朧として、夢か現実化が分からなくなるかも知れないから。いくら嬲り殺せても、その自覚を相手に与えられなければ意味がない。自分は、深い絶望を見たいのだから。
一番良いシチュエーションは……この体の主の妹だけに出会うことかもしれない。先ほど彼の意識や記憶を暇つぶしがてらに覗いてみたら、どうやら妹を溺愛しているらしいことが判明した。ならば『彼自身』の手で妹を殺されてしまったら……さぁ、どんな反応を返してくれることだろう?ナイフで刺すことにして、ソレが肉を突き刺すその瞬間だけ、体の支配権を戻してやるのだ。
来るべきその時を待ち遠しく思いながら、辿り着いた森の中を歩く。
周りには大きく育った多くの木々。足下には青々としている雑草で、時折獣道にさしかかる。花を見かけることもあったし、野生の動物の気配を感じることもあった。
面倒だからいっそ、この森ごと燃やし尽くしてしまおうか。体の主にそんな力はないから、自然と自分の持つ『力』を使うことになるが…その『力』に対応していないこの体は、どれほど耐えることが出来るだろう?
試してみるのも楽しいかも知れないと思いながら、それでも愚かなそんなマネは行わず、のんびりと歩き続ける。もしもの時に体が使い物にならなくなったら、笑い事では済まされない。体が壊れるかも知れないし、あるいはまた、深い眠りに誘われる事だってあるだろう。酷く、気に入らないことに。
体なんていくらでも代わりはあるが、眠らされたらどうしようもない。動けないし、考える事にも制限が付く。窮屈なのだ。
何て不便な……そう思いながら茂みの一つを抜ける。
そこには、何人もの屈強そうな人間がいた。
誰も彼もがまぁまぁ強そうで、こちらの姿を目に留めた瞬間にそれぞれ武器を構えたところを見ると…味方というわけでは無さそうだ。敵かどうかも分からないが、自分にとってはそれだけ分かれば充分。
にやりと笑みを形作って、ナイフへと手を伸ばす。
「なぁ、アンタら暇?だったら俺に付き合ってくれねぇ?ちょっと体を動かしときてぇんだけどさ…拒否権はねぇけど」
多分、浮かんでいるのは『自分の』笑み。