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瞳を開いて一番最初に見えたのは青々と茂る木の枝と、その間から微かに見える青い空。少し、白い雲も浮いているようだったが良くは見えない。それほどまでに、葉が多し茂っていたのだ。
次に映ったのは、不機嫌そうな顔。覗き込む……というよりは、呆れて見下ろしている感じだ。見下している、ではなく見下ろしている。ちょっとの違いだが、含まれる意味合いは全く違う。
……というのはともかくとして、ゆっくりと身を起こせば、そこにはトリニティの長男の姿もあって。
どうして彼らがここにいるのかと、そもそも自分はどうしてここにいたのかと、先ほどまでの事柄に思考を巡らせて……何がどうなっていたのか思い出す。
そうだ。自分はアレルヤと一緒に歩いていて、突然彼が触れてきて、そして……そこから先の意識がないところを見ると、どうやら彼に『何か』をされて、この状況があるのだろう。ヨハンが心配そうな顔をしていて、ティエリアがイライラとした面持ちで立っている、この状況に。
「……アレルヤは」
「やはりアレルヤ・ハプティズムと共にいたのですね………ロックオン・ストラトス、貴方はどうやら強制的に眠らされていたようです。下手をすれば一生、起きることはなかったでしょう。俺たちが通りかかったのは幸運だと言えます」
違う。そんなことを訊きたいのではない。先ほどまでの自分の状態より、彼がどこにいるのか……何より、一体『何をされたのか』を知りたかった。
起きて直ぐ後は、ただ単に『普通に』眠らされただけだろうと思っていた。そういう能力を持つ異端の話は聞いたことがあったし、どうやらアレルヤは特殊なようだから、色々な力が使えてもおかしくはない。そう考えていた。
だから、ティエリアの言葉の中の『強制的に眠らされていた』というのは分かる。だが、それに『下手をすれば一生、起きることはなかった』と続いたのが解せない。まさか彼だって、自分の職業を忘れたわけではないだろう。狩人。今はほとんど休業……というか、完全に看板を下ろしているが。それでも、他人が近付いて来れば寝ていても察知できる。殺されて二度と、というのは無い。
故に、自分が『知らない間に』二人がここにいるというだけでも、充分妙な話ではある。普段ならばとっくに目が覚めていたハズだ。特に、ヨハンがいるのだから。彼とはまだ戦う理由が無くなったわけでもないのだし。
「ティエリア、」
「分かっています。何をされたか、アレルヤはどこにいるか、でしょう?生憎どこにいるかは知りませんが……何が為されたかくらいは推測できます。だが……果たして、彼の了承無しで言っていいものか…」
何せ、重大な事。知ってしまえば『繋がり』は切れなくなる。改めて『他人』になろうと思っても不可能。身内……とまでは行かないかもしれない。少なくとも関係者以上、身内未満というところに、繋ぎ止められる。
それでも訊きますか?
問いかける彼に、ロックオンは静かに頷いた。ハッキリ言ってしまうと、そんな質問は今更だ。気遣いはありがたいが。
「そうですか……では、俺の口からはほんの少しの事柄、貴方がされた事を話しましょう。どういうことかは、やった本人にでも聞いてください。そこまで説明する気は無い。あぁ……ヨハン・トリニティ、貴方も聞きますか?引き返せなくなりますが」
「構わない」
「……分かりました」
一度言葉を切り、それからティエリアは、再び口を開いた。
静かに、瞳を閉じて。
「全ては『書き換え』。貴方は起きて、動いて、行動するというその『決まっていた事』を『書き換え』られた。これからずっと、眠っているようにと。ただ…それだけの事です。そして、その『それだけ』が、重い。俺たちにとっても、彼にとっても」