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とても平和な会話。
07.星
「こうして二人っきりになるのも……久しいね」
『端から見りゃ一人だがな』
「ま、それはそうだけど」
答えながらクスクスと笑い、ふと空を見た。
今は夜。都市部と違って強烈な存在感を持つ光量はなく、この待機場所の一つである孤島にはそもそも人すらいない。自分たちを除いたら、の話だが。
したがって、雲一つ無い空ではたくさんの光の点を見ることが出来た。街の明かりがない分、より鮮明に、より明るく。
過去、電灯という物が発明される前は、こんな空も当たり前の物だったのだろうか?当然の様に人々はこの満天の星々に抱かれて、夜の眠りについていたのかもしれない。人工的な光ではなく、天然の優しい光に。
今となってはもう、知りようもない事ではある。だが、だからこそ想像するのは楽しく思えた。
『…暇人。ていうか何だお前、その若干詩人っぽい思考』
「いいだろ別にっ……ていうか、わざわざ僕の考えてること見なくても…」
『これくらいしか、俺が出来ることねぇし』
「……つまり君が暇なわけだね」
『しゃーねぇだろ』
確かに、仕方なくはあった。表に出ているのはアレルヤであり、ハレルヤは内側にいる状態である。やりたいことが出来ない以上、暇というのも無理はない話だった。だからといって体の主導権を譲っても、ここは孤島なのでやることは限られる。片割れがやりたい『何か』が出来るとは思えない。
だからこそ、彼も表に出るなどということを言わない。できることといったら眠るか、こうやって話しているしかないのだから。本を持ってくるのを忘れてしまったので、読書は除外される。
「けどさ……やっぱり綺麗だよね」
『単なる光の点だろ』
「どうしてそーいうことを言うかな……」
『事実だからな。あぁ……でも』
そう言って言葉を切った片割れに、何?と問う様に意識を向ける。
『あれのどこが儚ねぇのかが分からねぇ』
「…唐突だね」
『思ったから言っただけだっつーの。いや、でもマジで分からねぇよ』
何でだ?と尋ねてくる彼に、さぁ、と肩をすくめてみせる。そんな昔のこと、自分には正確には知りようがない。
だが……もしかしたら、人は届きそうなのに届かない、その光が曖昧に見えたのかもしれない。目の前にあるのに、触れることは叶わない。そんな存在だからこそ『儚い』と形容したのかも知れなかった。
あるいは、朝になったら見えなくなってしまう、太陽の日に隠れてしまう存在だったからだろうか?とても目が良い人は昼間でも見えたというが、それはあくまで一握りの人間の話である。普通の人には朝になれば消えてしまう、そんな儚い物だったのだろう。
「……という仮説が出たけど」
『だから、さっきから言ってるが……どこの詩人だお前は』
「これでも頑張って考えたんだよ?」
『俺が質問して十秒後に答えて、頑張ってって言うか?十分くらいは考えろ』
「そんな無茶な…」
思わず呆れる。五分ならまだしも十分、というのは長すぎる。無茶にもほどがあるというものだ。
はぁ、と溜息を吐いて、いつの間にか月が大きく動いていることに気づく。大分、時間が経ってしまったらしい。
気づいてしまうと眠気が襲ってくる物で、どうやらこれには逆らえない様だ。
もう起きているのは諦めようと、アレルヤはふらりと立ち上がった。
「そろそろ眠るかな…」
『そういや明日はミッションあったか…ま、せいぜい頑張れよ』
「他人事?」
『まさか。いざって時は俺が助けてやるよ』
「嘘ばっか……すごく肝心なときに引っ込んだ君が、それ言う?」
『やるときはやるっての……って、根に持ってるのかよ…合同演習の時の』
「少しはね」
言葉を交わしながら、『二人』はコンテナのある方へと足を向けた。
空にはまだ、満天の星。
昼間にも、昔の漁師さんだったっけ……とにかく、見えた人はいると聞いたことがあります。どんだけ視力いいの、って話ですが……実際はどうなんでしょうか?
ほんのりアレルヤが詩人テイスト。けど、こういうのもいいと思います。