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朝、事は起こってしまいましたとさ。
チビスターズ第四話 ①
「メシ、できたぞー」
「あ、手伝いますよ、ロックオン」
「いいって。お前さん達は座ってゆっくりしてな」
椅子から降りようとするアレルヤを笑って止めて、ロックオンは次々と朝食を並べていく。手伝いにかり出されたティエリアやハレルヤは不機嫌そうな顔だが、まさか小さな二人にやらせるわけにもいかないだろう。危なっかしくて見ていられない。
全く、あの二人にフェルトの姿を見習わせたい。何も文句を言わず、よくよく働いてくれている彼女を。
精神的には、もしかしなくてもフェルトの方が上なのではないだろうか……。
ふとそう思い、否定できる要素が見つからずに苦笑する。
「何笑ってんだよ、気持ち悪ぃ」
「お前な……」
原因の一人をじとっと見ながら、アレルヤと刹那の前にグラスを置く。
「ミルク……?」
「言っとが、深い意味はないからな」
刹那が物言いたげな表情を浮かべたが、本当に深い意味はない。まさか、今はかなり小さな二人にコーヒーを出すわけにも行かない。あまりにもミスマッチだ。
それでもこちらに視線を向ける彼に、どう言ったら分かってもらえるだろうかと考え、何を言っても怒られるのではないかという結論に達した。怒鳴られるということは彼の性格からして無いが、それでもずっと見つめられ続けはするだろう……ぞっとしない話である。
さて、どうするべきかと、こっそりため息を吐く。
対応を間違えたら、あっというまに撃沈されてしまう。
「ロックオン・ストラトス、何を難しい顔で考えているのですか?」
「全員座ったけど……」
「あ、悪い悪い」
ティエリアとフェルトに促され、ロックオンもテーブルへと向かう。
計六人の食卓。
これだけたくさんの人数で朝食を取る、というのは何とも言えず懐かしく感じられ、ガラでもなく感傷に浸る。
だが、その思いも長くは続かなかった。
「ロックオンって、こうして見るとお母さんみたいですね」
アレルヤが、こんなことを言い出したからだ。
思わず凝視すると、彼は困ったような微笑みを浮かべた。
「ほら、今の服装とか、さっきハレルヤたちに指示してたときとか。そんな感じかなって。よくは……分からないですけど」
「言われてみりゃ、そうかもしんねぇなぁ?」
本気で言っているらしいアレルヤに、ハレルヤまで乗ってきた。ただし彼はおもしろ半分……否、おもしろがっているだけ。半分なんて物ではない。
ティエリアはバカバカしいと我感せずの態度を取っているし、刹那とフェルトは……納得の表情を浮かべている。
確かに、今、自分はエプロンを着ている。手に持っているのはお玉。手際も悪い方ではないと自負はしている。一人暮らしの経験も無いわけではなく、そのときに培われた料理の腕も人並みには。母親のようだと言われても、姿は問題ないかも知れないが…。
いや、だからといって……。
反論しようと必死に頭を巡らせていると、さらなる爆弾が投下された。
投下したのはフェルトと刹那。
「……だとしたら、パパはティエリア?」
「…ハレルヤかも知れない」
その言葉に、おもしろがっていたハレルヤと、無視を決め込んでいたティエリアの動きが止まった。
……まぁ、あの二人が母親と言うことはないだろうし、残りの三人が親の役というのは無理があるが……だが……。
「フェルト・グレイス、それは冗談か?冗談だな?」
「チビ、お前なかなか良い根性してんな」
…どうしてそういう地雷を踏むような言葉を口にするのだろうか。
ティエリアとハレルヤの様子を見て、ロックオンは匙を投げた。
自分にはもう、どうしようもない。
「えっと……僕ら、言ってはいけないこと言ったんですか?」
「この状況を見て判断してくれ…」
「……すみませんでした」
そんな爆弾落とされると、こっちも色々と大変なんだぞ…?
でも、疑似家族出来そうだよねって話。今は小さい子二人いるし。フェルトもいるし。お母さんも……って、ロックオンはお父さんでした。ってことはお母さんは本当は残った二人の…どっちだろ。
どっちにしろ、血の雨が降りそうです。