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前を歩くロックオンを見ながら、ティエリアが彼を起こした方法については……語らないことにしようと思った。あれは心臓に悪い。というか話したいとは思えない。
誰が言えるだろうか……あの屋敷の主が、装填されている弾丸を確認した後、躊躇いもなく銃口を彼の胸に向けて引き金を引いた……などということを。聞く方も嫌だろうが、話す方はもっと嫌だ。
結果として目を覚ましたから良い物の、あの時……ヨハンは、ロックオンが永遠の眠りにつくのではないかと、半分本気で考えた。標準は胸、しかも左胸にあっていたのだから、その心配は的外れでも無かっただろう。杞憂で終わって何よりである。
なのだが。
自分がそんなことを考えているとは知らないティエリアと、何をされたか知らないロックオンだ。ヨハンが避けようとしている話題にも、驚くほど簡単に踏み込んでいく。
「なぁ、俺が何か普通じゃないことをされたのは分かるんだが……どうやって起こしたんだ?普通じゃないことにはやっぱり……普通じゃだめだろ」
「簡単なこ…」
「ロックオン、少しこちらへ」
何でもないように答えようとしたティエリアの言葉を遮り、ヨハンはロックオンの手を引いて僅かに距離を取った。問いかけるような気配を感じたが、敢えて無視する。これはあくまで彼のため。ハッキリといきなり事実を突きつけられるよりは、丁寧に…の方がいいだろう。
「で、何だよ」
「君の持つ銃に、白い銃弾は幾つ残っている?」
「は?そんなの六つに決ま……」
言いながらも確認して、茶髪の狩人の動きが止まった。気付いた……だろうか。
結局の所、ティエリアが言おうとしているのなら、隠し通すのは無理である。ふとした瞬間に、どうでも良いことのように語られてしまったら……絶対に多大な衝撃を受ける。今この状態よりも遙かに大きな。多分、彼は無駄な事は口にしないだろうから、「撃っただけだ」なんて言って、それで終わりにしかねない。相手が信じるか、受け入れるかはお構いなしに。
さぁ、どう出る……と眺めていると、彼は銃をしまい、ゆっくりとこちらを見た。少々、顔を引きつらせて。
「まさかとは思うんだが……俺、撃たれたってことか?」
「ちなみに左胸だ。傷は無いようだが」
「マジでか……」
呟く彼は、思ったよりは混乱していないようだった。自分で確認して推測して、答えを得たのだから、それが小さいのは当然のことだが。だが……何か、心当たりもあったようだ。何度も頷いている。
「魔を打ち払う、ねぇ……効力はあんだな」
「何の話ですか?」
「いやいや。こっちの事。アンタは気にしなくて良い」
「そうですか」
ならば、そうなのだろう。彼が無闇に嘘を吐かないと言うことくらいは知っている。』必要に迫られればいくらでも嘘が飛び出すようだが、それはそれ。今回は違うだろう、多分。
「話は済みましたか?」
「おう。何してもらったかも、ちゃんと教えてもらったぜ」
「なら、俺は何も言わなくても良いですね」
「なぁ……参考がてら、お前は何て言おうと思ってたんだ?」
それはヨハンも気になるところだ。少し意識をそちらに向ける。
二人分の視線を受けたティエリアは、何をいきなり、という表情で、それでも答えた。
「撃った、と。それだけ」
「あぁ、そうですか……」
予想よりも三文字ほど少ない返答だった。