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「参りましたね……どうしましょうか」
「とっととアイツら蹴散らせばいいだろうがよ」
「無理です。三人のうち二人は異端ですよ」
紅い血だまりを挟んで向こう側にいる三人組を茂みから伺い、リボンズとアリーは機を待っていた。この状態で動くのは得策ではない。人質のアレハンドロがいる……のはどうでも良いが、能力持ちかが分からない異端が二人。下手に出て行って返り討ちというのはシャレにもならない。苦笑で精一杯だ。
参った、というのは人質のことも若干は含まれているが、一番は傭兵部隊が全滅していることだった。様子からして、どうやら彼らがやったのでは無いようだが……では、一体誰の手で。先ほどの狩人の集団といい今回といい、自分たちが離れているときに事が動きすぎである。まるで謀ったかのようなタイミングに、リボンズはいるとも知れない神を恨んだ。自分か、あるいはアリーがいれば、何かできたかも知れないのに。
そう考え、ふと隣の傭兵はどう感じているだろうと興味が湧いた。彼はこの傭兵を束ねるリーダーだったハズだ。何か、思うところが有るのではないだろうか。舐められたようで腹立たしい、強い相手で喜ばしい……いくらでも、感情という物はある。その内の、どれを抱いているだろうか。
「ったく……にしても全滅たぁ、根性がねぇな」
「根性……いやいや、そういう問題でもないのでは…」
「そういう問題なんだよ」
断言する彼は、少なくとも悲しんではいない。そこはまぁ彼の性格上、予測はしていた箇所なのだが……ここまであっさりしていると、いっそ清々しい。薄情者などという思いもどこかへ去っていくような気分だ。元からそんなこと、思ってさえいないことは置いておいて。
強く感じているのは、呆れだろうか。不甲斐なく全滅してしまった元部下たちに対しての。ここを離れていた時間はそんなに長くない。その間だけでも持ちこたえることが出来なかった、彼らに対しての呆れ。
なるほど、彼らしい気がする。
思わず納得して、意識を三人組の方へと戻す。
「しかし……どうしましょうか。データがあまりにも無い」
「だな。あのガキの事だって、俺は立場のことしか知らねぇ。強いか弱いかなんざ、確かめもしてねぇからな」
「ここは見、でしょうか」
「しかねぇよなぁ…」
溜息を吐いているところを見ると、やはり戦いたくてウズウズしているらしい。手が今にも剣に掛かろうとしているのは……放っておこう。言ったところで直しようも無いだろうし。これは一種のクセなのだろう。敵がいたら構える。立派な心がけだ。
「今後の方針は……一応、決めておきましょう」
「チャンスが来たら不意を打つ」
「それまではここで、隠れて待機、ですか」
それならばそれで。
待つことは苦にならない。今回の進撃まで、とても時間が必要だったのだ。それが一時間、二時間ほど増えたからといって、何が変わるだろうか。
それに、よく考えれば彼らは生きていた方が良い。その方があの、目標に関係があるらしい青年が出てきやすくなるだろう。もしかしたら目標そのものも、出てくるとも限らないのだ。
ならばその時を楽しみに待っておこうと。
リボンズは、本格的に見るだけの状態に入った。