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それは身近すぎて忘れがちだけど
大切な、音
13.幸せの音
とくん、とくん…という心臓の音が心地いい。
何だか、生きてる感じがするから。
そう、少年に言う。
「あ、やっぱりお前もそう思う?」
同意者を見つけて嬉しいのか、すると目の前にいる少年は明るく笑った。
「だよな、やっぱコレ聞いてたら実感湧くよな」
そう言う彼の表情はどこか冴えないように思える。
どうしたのだろう?
「ん?いや、何でもないって。生きてるってのが分かるって、素晴らしいって話」
訊けば、こういう答え。
どこか曖昧に見えて、実は何よりハッキリと物語っているような言葉。
多分、彼は生きることと死ぬことと、その間に行ったことがあるのだろう。
だから、生きることに対して思うところがある。
けれども……それを上手く実感できないから。
より、明確な物にソレの形を求める。
つまりはそういうこと、なのだと思う。
アレルヤにとって生とは、自由であることだ。
心が自由だから、体も生きている。そういう感じ。
「お前も結構、曖昧じゃん……」
ついつい、思ったことを口にしていたらしい。少年は、呆れた様な表情を浮かべた。
「案外、みんな生きてるって事を分かってないのかもなー」
それは?と頭に疑問符を付ける。
みんな、生きているからこそ。
それを知っているからこそ『生きて』いるのではないのだろうか。
「なかなか、分からないものなんだって。ほら、人間って実感しないと分かんないだろ?」
……そういえば、そういう話を聞いたことがある気がする。あるいは本で読んだか。
「だから、そういう境界線?みたいなとこに行かないと、生死とか理解できない感じ」
つまり、死に触れないと生は理解できないということか。
確かに……対照的な物がないと、理解は難しいかもしれない。
例えば世界に青だけしかなかったら、赤い色は分からない。見たことがないから。
同様に、青についても分からなくなってくる。
それと同じ。何か違う物が無いと到底わかり得ないということ…かも。
考えれば考えるほどゴチャゴチャしてきた。
軽く頭を振って、何をどうしていたかをハッキリさせる。
それから一言、難しいね、と呟く。
「だよな。俺もわりと掴めてないし」
少年はぐっと伸びをして、それから続ける。
「ま、何となくでも分かってたらいいんじゃない?」
……アバウトすぎだった。
しかし結局の所、この話はそういう物なのだろう。
結論なんて必要ない、感情で全てをまとめ上げるような。
だからむしろ、確定している答えは必要ない。
「な、ところでお前って、夢が覚めて欲しい派?覚めて欲しくない派?」
……いきなり、何だろう?
とりあえず、どっちでも無いと答えると、少年は嬉しそうに笑った。
「やっぱ仲間だな。俺もどっちも違うんだ」
だって、と彼は言う。
「夢の中だったら、まだ死とかに触れてない頃だし」
けれど、と彼は話す。
「夢の外だったら、大好きな人がそこにいるし」
微妙なんだよな、と笑う彼にこそ夢は必要なのかもしれない。
ふと、そう思った。
だって夢は現実に望み得ない事が起こる場所。
(二つを欲しがる彼には、夢と現が必要なんだ)
今回も分かりづらいかも知れないです。分かりづらい人が多いな…。
えとですね、今回はリヒテンダールです。当たりましたか?
彼は、実はとっても『そういうこと』を考えている気がしたのです。