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 気づいたときには、体が動いていた。

 すぐ隣で座っていたアレルヤの肩を掴み、ハレルヤは片割れを押し倒した。強かに背中を打ち付けたためか顔を歪めた彼のことさえ気にせず、扉の縁に右膝をかけ、方を床に押し付けたまま、馬乗りのような状態になって。
 ロックオンが止めようとしていたが、気にはならない。

「ハレルヤ……」
「お前はバカか!?何だよ『契約』って!従順になるだと!?……ふざけんなよ…ッ……どうして俺たちに黙ってンなことしてんだ!」
「だって」

 アレルヤは静かに瞳を閉じた。

「だって、子供が普通に生きていくためには、安定した場所、庇護者のどちらもが必要なんだ。どちらが欠けてもいけない。それじゃあ、『普通』に生きてはいけないから……」
「そんなもん必要ねぇだろ!?俺たちなら、三人だけでも生きていけた!」
「生きていくだけなら、ね。けれど僕らは『普通』に生きなきゃいけなかったんだ。全ては、刃を鞘に収めるため。分かっているでしょう?」

 その問いに、肩を押している力が弱まる。
 それでも片割れは振り払って起きようともせず、ただ黙ってこちらを見つめるだけ。狩人も何も出来ることはないというように、後ろで黙って立っていた。

 ……確かに、知っている。自分たちは『普通』に生きなければいけなかった。
 あの頃は生まれ持った力は制御できたが、芽生えた力は制御しきれていなかった。それは致命的な欠陥とも言えて、下手をすれば自らが死に絶えるかもしれない状況に、いつもさらされていた……そんな片割れ。そして…

 そう思い、しかしハレルヤは首を振った。違う。それは理由にはならない。
 これは『普通』に生きる理由だ。決して、アレルヤだけが辛い目に会わなければならなかった、その理由ではない。
 手に、再び力がこもった。

「それはお前だけが耐える理由じゃねぇだろ…っ」
「違うよ。僕だけが辛かったんじゃ。僕はこうしなければいけなかった。あくまで庇護者になったのは彼だから、僕はそれを失わないために、行動をしないといけなかったんだよ」

 なぜなら、僕が耐えるのを止めてしまったら……あの人は、死という運命を辿るしかなかったのだから。

 朗々と歌い上げるように言う片割れを見て、ようやく気づいた。
 すっと目が細くなり、手にはさらに力がこもる。

「……アレを…引き離していた感情を、お前は受け入れたのか?」
「ご名答。しばらくはこんな調子だから色々よろしくね。本調子までは長いよ?」
「…………何か、もういい」

 アレルヤの肩から手を離し、ハレルヤは立ち上がった。
 起き上がる片割れを見ながら、溜息を一つ。

「よーく分かった……こういう時のお前にゃ、何を言っても無駄なんだよな……」
「そんなことはないよ…多分」
「多分てなんだ……あ、そうだ。忘れてた」
「……?」

 首をかしげるアレルヤに、ハレルヤは笑いかけて……
 パチン、と。
 片割れの頬を、はたいた。

「…!?」
「おまっ……」
「黙ってた分だ。このくらいの権利はあるだろ?」

 紅くなった頬に手を当てるアレルヤと、驚いているロックオンを見て。
 ハレルヤはにやりと笑った。
 

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