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もう少し、女の子らしくなってくれないものだろうか。
いや、育ちが何とも言えないので、私としても困っているのだが…。
誰か、どうにかしてくれないだろうか……。
(ロシアのアライグマ…もとい、荒熊の日記より抜粋)
07.手土産
それは、休憩室でのことだった。
「一つ質問があります、中佐」
「何かね、少尉」
「疑問なのですが」
不思議そうな顔をして、ソーマが両手で何かを弄っている。
そういえばさっき、部下の一人と話していたなと思い出した。つまり、彼にもらったプレゼント、ということなのだろう。
だが。
「どうして休暇から帰ってきた人たちは、私に物をくれるのでしょう?」
「うむ……」
やっぱり分かっていなかったのかと、これまで彼女に土産を与えてきた部下たち(たまに上司。主に女性)を哀れに思う。ちなみにこれには自分自身も含まれているのだが、そこにはあえて触れない方向で行こうと思った。
代わりに、机を挟んで目の前に座っている部下に目をやる。
さて、何をどう言うべきか。
「中佐?」
「少尉、土産というものを知っているか?」
「土産……どこかに行ったときに買って帰る、あの?」
彼女の言葉に安堵を覚える。あるいは『土産』という存在自体を知らないのでは無いだろうかと、少しばかり不安だったのだ。が、受け答えから判断して、一応は知識としてあるらしい。
「ここまで言えば分かるな?」
「彼らは私に土産を、ということですか」
「そうだ」
「なるほど……」
良く分かった、とばかりに何度も頷くソーマを認め、紙コップの中のコーヒーを飲む。何だか一仕事片付いたような気分だ。しかも軍の書類を片付け終えた時よりも、さらに達成感がある。
しかし質問は一つで終わりではなかった。
「では、ついでにもう一つ、よろしいでしょうか?」
「……?」
「どうしてアクセサリーや小物と言った、実用性のない物ばかり送られるのでしょう?」
それは少尉が身だしなみに気を遣わなすぎるのを見ていられなくなった女性達が、土産と称してそれらを渡して彼女は何もしないだろうから自分たちで色々やっちゃおう、とか思われているからだ。
……と言いたかったが、言ったところで納得されはしないだろう。何せ相手は彼女だ。ならば、曖昧に濁していった方が良いのだろうか…。
「それはな、少尉。皆、少尉に普通の『女の子』になってほしいと思っているからだ」
結局…適した言い方が見つからなかったので、そのまま言うことにした。
反応はというと……案の定である。理解しがたいという表情を浮かべていた。
「何故……私が普通になったら、戦いは…」
「あー、いや……少尉、普通というのは技能の方ではなくてだな…」
「……?」
「考え方といった方面の事だ」
答えながら……何でも戦う方向に物事を繋げるのは少し考え物だと思った。そのうち直るのだろうか…怪しい物だが。
果たしてそのような未来が来るのかと、ほんの少しだけ、誰にも悟られない程度に溜息を吐いた。
いや、来てくれないと困るというか…。
荒熊親子は仲良しだから好きです。
きっとソーマも女の子らしくする日が来る…ハズ。