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「よし、一段落付いたし戻る方法探すぞ」
「あー……やる気になってるとこ悪いんだが」
「ん?」
「眠ってるぞ」
言われて見れば、そこには狩人に寄りかかるように眠っている片割れの姿があった。すやすやと寝息を立てている姿は、いっそ憎たらしいというか……よくもまぁこんな状況で眠っていられる、というのが正しいところ。寄りかかられている彼に殺意を覚えるのは当然のことなので割愛。
仕方なくはある。魔王の血を抑えるために通常の吸血鬼よりも頻繁に血を摂取する必要があるが、それだけでは『足りない』というのが現状だ。だからこそ唐突な睡眠があり、これによっても血を抑えている。
……という理論というか理由は分かっているが。
「どんだけ緊張感無いんだコイツは…」
「起こすか?」
「いや、起きねぇだろ」
「……だよな」
こんな、ワケの分からない状況でコレだと…かなり困るし非常に困る。もしもの時に、手を打てないこともありそうだ。そんな無様なコトは起こさないが。起こったとしたら、ロックオンでも犠牲にして逃げる。
「……なんか酷いこと考えてないか?」
「いや?別になにも」
何を考えていた勘づいたらしい。じとっとこちらを見ている狩人を無視して、片割れを肩に担ぎ上げる。こう言うとき彼が軽くて助かる。これで重かったら……冗談にもならない話だ。とりあえず突然の睡眠故に食事の時間が適当になってしまう事に、少々の感謝の念を送る。基本的にこれのお陰だろう。あまり体に良く無さそうだが、今はそれは関係ないので置いておく。
さて、それよりも真面目な話。
左右に伸びる廊下……一体、どちらに行けばいいのだろう?
あるいはどこかの扉を開くのだろうか…。
扉の方は無いだろうなと思う。あくまで扉は『それぞれの記憶に繋がる扉』であり、この世界の出入り口というわけでは無いだろうから。
では廊下を歩いていくしかないのだが、おそらく右に行っても左に行っても、果てはないのだろうと推測された。ここは記憶の世界とでも言うべき場所。果てがあってはどうしようもないのだ。何故なら、記憶は増える物。果てがあれば増える上限も定まってしまう……それではいけないのだ。
「どうすっかな……」
「何だ…?やっぱり良い案は無いワケか」
「簡単に出てきたら笑い話だっつーの」
答えながら歩き、先ほどの黒い断層について考えてみる。
あれは結局、何だったのだろう?断層に記憶が呑まれたからと言って、記憶が消えたわけでも無さそうだったし、無害な物…でもないのか。
考えてもしかたないかと、頭を振ってその問いを追い出す。後でティエリアにでも調べさせれば良いだけのことだ。彼は物事を調べ上げるのを好いているようだから、口では文句を言いつつも実行してくれることだろう。
それも出ることが出来たら、の話なのだが。
無駄と知りながらも、ハレルヤは再び一歩、足を踏み出した。
もう一つの疑問……『ニール』…のことは考えないことにした。考えたところで答えは出ないのだから。過去、何らかの関わりがあったのだろうと推測できるだけで、今は十分だと思えた。