忍者ブログ
式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

134


134


「お前さ……もうちょっとゆっくり歩いてくれないか…?」
「嫌だ面倒な。何でテメェに合わせねぇといけないんだよ」
「いや、俺貧血だし……」
「知るか。テメェが俺に合わせろ」
「んな無茶な…」

 それが出来ないから頼んでいるというのに。それを分かっているのだろうか……分かっているのだろう、きっと。それでもやっているというから、始末に負えないというか、もの悲しくなるというか。

 相変わらずのペースで歩く彼の背中を眺め、溜息を吐いた。本当にペースを落として欲しいのだが。普通に歩けと言うのは今の自分には、とてもキツイものがある。むしろペースが上がっているような気がするのは気のせいだろうか?…気のせいだと信じたかった。

「で、目的地とかは?」
「ねぇよ、ンなモン。止まっててもどーしようもねぇだろ」
「あぁ……そりゃそうか…」

 何となく納得。確かにその通りだった。
 なるほど、と思いながら彼に担がれているアレルヤを見る。

 落ちかけた自分に手を伸ばしたとき、彼はロックオンを『ニール』と呼んだ。それは本名で、専ら偽名を用いている自分のソレを、一体どうやって、どこで知り得たのだろう?教えた記憶はないのだが……その記憶が改竄されている、ということもないだろうし。

 偽名を扱うようになる前に会ったのなら、それも分からなくはない。が、彼とは先日初めて会ったのであって、狩人を始める前に会ったことは無いはずだ。覚えがない。だから本名を知るに至る事情が、全く分からないわけなのだが……人に訊いたというのも無理があるだろう。

 では、と思って首を振った。こういうことは考えても分からない物だ。答えのでない疑問に頭を使うより、そちらに回す酸素を体を動かす方に使った方が良い。このままでは本当に倒れそうだった。

「あ、そうだ。一つ提案があんだけど、訊くか?」
「提案?」
「さっきのアレ、忘れたかったら忘れさせてやる」
「……『書き換え』て、か?」

 二つに分かれた魔王の力。片方がアレルヤに渡ったのなら、では、もう片方は?
 訊くまでもない、それは見れば分かることだった。
 だから訊いたのだが、しかしハレルヤは振り返ってバカか?と呆れにも似た表情を浮かべていた。

「何でンな事にそっちの『力』を使うんだ?」
「いや、流れ的に」
「どんな流れだ…?…とりあえず後付の『力』どもは好きじゃねぇんだよ」

 だから滅多に使わねぇよ。必要に迫られても使うか分かんねぇな…。例外はあるけど。
 そう言う彼は決して大げさに言っているわけではないようで……そこが、彼と彼の片割れの差なのかも知れなかった。とにかく使おうとは思わない彼と、必要ならば…そちらの方が確実ならば使う彼との差。まぁ、上がってしまった身体能力はどうしようもないだろうから、そこは有効に活用しているのだろうけど。

「ってことは……お前の元々の能力って」
「……多分、テメェが思ってるのだよ…」
「記憶の書き換えか……地味だな」
「ちょっと違うけどな…………けど言うな。気にしてんだ」

 で?と問われ、ロックオンは首を左右に振った。忘れようなんて、一欠片も思わなかったから。
 

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
02 2025/03 04
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
カウンター
プロフィール
HN:
式ワタリ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
ガンダム大好き生物。キャラも好きですが、機体も大好きです。実は(?)、今は軽く三国伝にすっ転んでます。
最新CM
[09/28 ナワ]
[06/15 オシロマミ]
[11/02 banana]
[11/02 式ワタリ]
[11/01 犬っぽい]
最新TB
バーコード
ブログ内検索
フリーエリア
忍者ブログ [PR]