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「おはよ……ってあれ…?みんな……寝不足?」
「やぁフェルト……おはよ………」
「何の用だフェルト・グレイス」
「ハロとHAROを届けに来たの…ロックオンもネーナもいる、でしょう?」
かく言う自分の足下ではオレンジ色の球体が跳ね、紫色の球体は耳を上下していた。
どちらも昨日、狩人の彼と異端の彼女にあげると言った代物である。色々あってうやむやになっていたから、今日、引き渡しに来たのだが。
勝手知ったる屋敷である。軽いノックだけで扉を開いて待つこと数秒、現れたアレルヤとティエリアの様子を見て冒頭に至る。
ティエリアは上瞼と下瞼が出会い掛かっているし、アレルヤにいたっては開いてもいない。ただフラフラと揺れているだけである。よくそんな状態でここまで来れたものだ。僅かばかりだが、賞賛の拍手を送りたいと思った。
「というか……本当に何があったの…?」
「体中がギシギシいって眠れなかったんだ……昨日は色々ありすぎたからさ……」
「そう…ティエリアは?」
「あんな物を見せられて、すぐに眠れるほど太い神経ではないつもりだ」
言いながら屋敷の主は、屋敷の住人たる彼の方をジッと見た。
見られた本人は力なく階段の手すりにもたれ掛かって、微かに笑うのみだった。
「そーだ…フェルト、ご飯食べた…?」
「食べたけど……」
「そっか……じゃーさ、デザートだけでも食べてかない………?」
「じゃあ、言葉に甘えて……アレルヤ、本当に大丈夫?」
「だいじょーぶ…」
そう口にしたのが最後に、彼の意識は完全にブラックアウトしたらしい。急に力が抜けたかのようにふらりと揺れ、すぐ傍にいたティエリアの方へと倒れかかった。
突然の事だったが予測はできていたようだ。しっかりと支えて、彼はアレルヤを担ぎ上げた。…その細い体のどこからそんな力が出るのかと訊いてみたかったが、そんなことをするほどフェルトは自殺願望を持ってはいない。どこら辺が危ないかというと、『細い』の辺りだろうか…。
「食堂に行くぞ」
「うん」
ティエリアが先導し、フェルトはそれにならった。
アレルヤはそのまま連れて行くのか?と思っていたが違うようで、道のりの途中にあった部屋のベッドに放り込んでいた。
ちらりとその部屋を振り向きながら言う。
「……いいの?置いてきて…」
「問題はない。あの部屋の持ち主は滅多に帰ってこない」
「あ……いるんだ、あの部屋にも持ち主」
部屋の内装を思い出してみる。ベッドに机、椅子、タンス。日常的な調度品はあるが、それ以外の物は……いや、片隅に段ボール箱がいくつも積み上げられていた。ソレを除けば、実にシンプルな中身だった。
「私の知ってる人、とか?」
「知らないだろうな。先にも言ったように彼は滅多に帰ってこない。帰ってきても職業柄、町にはあまり行かないしな。まぁ、ここも一時の宿という類の物だから、それもあるか」
「へぇ……」
本当に、どんな人だろう?
そう想像している間に食堂に着いた。
ティエリアが扉を開ける前に「覚悟しておけ」と言い、どういう事かと首をかしげていたが……中の様子が目に映ると、その意味が酷く理解できた。
トリニティ三兄弟はいつも通り。沙慈とルイスも、ここにいる、という以上さえ除けばいたって普通なのだろう。だが、あとの四人が凄いことになっていた。
ソーマは椅子に座りながらもコクリ、コクリと前後に揺れていた。刹那は何度も目をこすっていて、ロックオンは目の下にクマ。ハレルヤに至っては熟睡状態だったのだ。