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まぁ、楽しい楽しくないは個人によって変わる…けど。
これは行き過ぎ……な気がする、よ?
チビスターズ第五話 ④
「コーヒーカップ、楽しかったね」
「……そう?」
ニコリと微笑んで言うアレルヤには悪いが、フェルトには『楽しかった』とはお世辞にも口に出来なかった。あれは……地獄だ。
間違いの始まりはハレルヤを乗せたこと。折角なんだし乗ろう、というアレルヤの誘いを断り切れなかった彼に、カップ中央にあるハンドルを握らせてしまったのだ。結果は……言うまでもないだろう。
同じカップに乗っていたフェルトは未だに頭がクラクラするし、ティエリアは気分悪そうにベンチの背もたれにもたれ掛かっている。アレルヤとハレルヤ、それに刹那も無事という事実に若干の畏怖を覚えたが、そこは……頑張ってトレーニングしているんだと思うことにする。マイスターだから、ではティエリアが倒れてる理由がないので。
「ロックオン、遅いね」
「どこかの幼児でも付け狙っているんじゃないか?」
「刹那……」
何か言いたげなアレルヤだったが、刹那の様子を見て溜息を吐くに止めた。何を言っても無駄だと悟ったらしい。そこは同意見なのでフェルトも黙る。
…というか、どうしてロックオンはロリコンと称されているのだろう。
首をかしげるフェルトは知らない。ある意味自分のせいなのだとは。
「オイ、アレルヤ」
「ハレルヤ……何?」
アレルヤを膝に乗せているハレルヤが、彼の片割れの髪を弄りながら言う。視線は刹那の方を向いていた。
…ちなみに言うと、ベンチには向かって左からティエリア、フェルト、ハレルヤの順で並んで座っている。フェルトが真ん中の理由は、ハレルヤとティエリアを隣り合わせるとケンカを始めるからである。小さくなった二人は、それぞれフェルトとハレルヤの膝の上にいた。つまり、刹那は自分の膝の上である。あと、ロックオンは缶ジュースを買いに。いわゆるパシリだが、そこは言わぬが花である。
それはともかく。
フェルトは隣の二人に意識を向けた。
「一つ訊く。何でこのチビはぶっ倒れてねぇんだ?」
「あー……やっぱり狙ってやってたんだ……」
呆れた風に言うアレルヤに、当然、とハレルヤは頷いた。フェルトの膝の上で刹那の瞳が半眼になったのにはお構いなしである。
「まぁ、無理に誘った僕にも非はあるけど…だからって」
「いいじゃねぇか。俺とお前が楽しめる程度には加減したし」
「皆が楽しめないといけないんだよ……?」
正論である。
やはりハレルヤにはアレルヤという良心がいないとマズイんだろうな…と思いながら、隣のティエリアを眺める。そろそろ喋る元気ぐらいは出ると思うのだが。
だが、まだそれは無理なようだ。瞳を閉じてグッタリとしている様を見ると不憫に思えてくるが、これが回復したら『回復する前の方が良かったのに』と思うんだろうと容易に想像が付く。彼が復活したらいち早くここから退場しよう。巻き込まれてはかなわない。
その時は刹那とアレルヤも連れて行こうか……その方が良い。
決めて、視線を似通っている(というか一緒な)二人に意識を戻す。
いつの間にか髪弄りは髪梳きに変わっていた。
結構楽しそうなハレルヤに、髪を触られていることを気にも留めていないアレルヤが対照的である。
「死にゃしねぇんだし、問題ねぇよ」
「そーいう問題じゃないんだってば!」
「同感だな、アレルヤ。俺もそう思う」
「刹那…うん、そうだよね!」
刹那も話に加わり、話が続き。
ロックオンが帰ってくるまで、話は終わらなかった。
「よく話すな……」
「……う……」
「あ、ティエリア…目…覚めた?」
「フェルト・グレイス……か」
「無理は…しないで。しばらく眠ってると良い」
「そうさせてもらう……ハレルヤ…万死に値する……後で千倍返しだ……」
「……ほどほどにね」
千倍は…むしろ甘い気がするけど。
(ほら、万倍返しとか)
(……フェルト・グレイス?君はそういうキャラだったか?)