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お題、四分の一ほど消化です。
嗚呼…少しずつ、二期の足音が近付いてくる…。
今回は交差点(クロスロード)姉弟の話。
05.夜行バス
とても、窓の外を流れる光の流れが不思議だった。
それが『街の灯り』であることくらいは幼い僕でも分かったけど、それでも、何だか見慣れた光とは違うように思えて、とても珍しく思えて、ずっと、ずっと見ていた。
隣に座っているのは姉さん。姉さんは何もせずにただ、バスの座席に座っているだけ。
僕よりも年上の姉さんのこと、きっと、こういう経験も何回かしたことがあるんだと思い、ちょっとばかりの羨ましさを覚える。他にもたくさん、僕のしたことがない事をやっているんだとも考えついたから。
夜のバスは空っぽだ。僕ら以外だったら運転手さんしかいない。
そんなガラガラのバスの中、僕らは一緒に座っていた。
「姉さん、いつ……着く、かな」
「さぁね……まぁ、今日中には着くと思うけど」
「……眠いな」
今でも充分遅い時刻なのに、その言い様だと今日か明日か分からないようで、家に着いたときに起きていられるかが少し心配だった。起きていないとバスから降りられなくて、帰るのも遅くなるかも知れないもの。
そう言うと、姉さんはクスクス笑って口を開いた。
「じゃあ、眠ったらいいわ。着いたら私が起こしてあげるから」
「けど、姉さんは眠くないの?」
「まぁ…眠いけど、我慢できないほどじゃないわね」
「じゃあ、僕も我慢するよ」
姉さんにだけ我慢をさせるわけにはいかない。
僕はそう思って言ったのだけど、姉さんは呆れ半分、苦笑半分の表情を浮かべて僕の額をピンッ、とはじいた。
「子供は眠る時間でしょう?」
「子供って……姉さんも子供じゃないか」
「私は良いのよ、私は」
「何で?」
「だって姉だもの」
良く分からない理由だったのに、何でか姉さんが自信満々に言う物だから……ついつい、僕も信じてしまった。姉さんが言うのならそうなんだろうって。
実際はそういうことでなくて、姉さんの楽しそうな笑顔に押し切られた感じも…しなくは無いんだけど。
けど、そういう話も僕の決意とは関係ない。
引っ付きそうな瞼を何とか開いて、何度も何度も目をこすって睡魔をやり過ごそうとするのだけど、どうしても……完全に出て行ってくれなかった。
「沙慈……アンタ、いい加減に寝ちゃいなさい」
「けど…」
「私まで寝たら、着いたときに誰が起こすって言うの?」
まさか運転手さんに頼むわけにもいかないし。
そう続ける姉さんの言葉に、グッと詰まる。
正論である。
「さ、そいうわけだから沙慈」
「……分かった」
まだ少しばかり不満は残っていたが……結局、僕は姉さんに丸め込まれてしまった。
それでも別に良いかとか、そんなことを考えながら、僕は睡魔を受け入れた。
少し短め。そして珍しく地の文で『僕』。
どこに行っていたとか、何をしたとかはどうぞ想像を。