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王の庵で、忌まわしいあの日の後日。
みんで住むに当たって、役割担当を決定中。
06.NO
「ねぇ、鏡の掃除だけは…替わってもらっても良いかな…」
「ん?お前がそーいうこと言うの、珍しいな」
「何かあったのか?」
「えっと……なんて言うか、苦手、っていうか…」
二人の問いに、アレルヤは曖昧な笑みを浮かべた。
…そう、苦手なのだ、あの鏡は。
少なくとも嫌いではないだろう。感謝をしている対象を嫌いになるのは、けっこう難しい気がする。…場合によるのかも知れないけど。
けど、自分の場合はやっぱりソレである。
「苦手……ねぇ」
反復するように呟き、ハレルヤは静かに壁にもたれ掛かった。
それから瞳を閉じて、静かに瞑想するかのような…そんな様子は何かを話すよりも雄弁に、彼が『妙だ』と考えている事を伝えている。
「何で苦手なんだよ、お前。アレの存在が確認できたのはついさっきだろ?苦手になる時間が、一体どこにあったってんだ?」
「その……ほら、能力が凄いというか…間違った使い方をしたら大変というか…」
「そりゃそうだけどな」
正論ではあるが納得は出来ないという表情を浮かべるハレルヤに、少し焦る。このままではバレてしまう……いや、別に話してしまっても良いのだろうけど……なんとなく、嫌だと思ったのだ。
あの鏡さえ無ければ自分が『あんなこと』をすることも、出来ることも無かったのだし。
その事実のため、もしも知られてしまえばハレルヤが黙っているはずはなく、躊躇いもなく鏡を割ってしまうだろう。あのヴェーダという鏡のせいではないのに、知りたいと願った自分がいけないのに、そうなってしまうのは嫌だった。
それでも、やはりキッカケであるのは事実。あぁなるキッカケを与えてしまったその鏡が、どうして苦手にならないだろう?
つまりはそういうことである。
「……君のその理由は違う気がするが…まぁ良い。君がそこまで言うのならば、あの地下の物置の掃除に関しては考慮しよう。俺とハレルヤで交互にやる」
「うん、ありがとう、ティエリア」
溜息を吐くティエリアに、アレルヤは軽く微笑んだ。
ちらりと見れば片割れも同じ意見らしく、今は瞳を開いて黙って聞いている。
あぁ……本当に、本当に優しい二人。
こんな自分にも良くしてくれる、優しすぎる二人。
そんな二人と『家族』であることが、アレルヤにとって最大の誇りだった。
本人たちに言ったら、きっと二人は互いに指を差し合い『コイツと家族はゴメンだ』とか言い出すのだろうけど、結局の所、それは照れ隠しだとアレルヤは認識していた。本気で嫌なら行動力のある二人のこと、出て行くくらいは簡単にする。
「では、食事当番の話だが」
「あー、眼鏡、テメェは台所に立つな。絶対に立つな。天変地異が起ころうと、俺が仮にいなかった際にアレルヤが病に倒れようと、一人屋敷に取り残されたときも、とにかく台所に立つんじゃねぇぞ」
「何故そこまで頑なに拒む?確かに俺は今までの人生で、普通のモノを作り上げたことはないが……大した問題ではないだろう。ようはやる気だ」
「大した問題だから言ってんじゃねぇかよ!てーかなぁ、やる気で全てが解決すんなら、今頃この世のありとあらゆる問題は解決してんだッ!」
「今回ばかりは、僕もハレルヤに賛成かも…」
今にも噛みつきそうな勢いのハレルヤの傍で、アレルヤも苦笑しながら小さく手を挙げた。今回は確実にハレルヤが正しい。
どこか不満げな様子のティエリアだったが…自覚はあるらしい、渋々ながらも何とか了承してくれた。
「料理は僕とハレルヤでやるとして…じゃあ、ティエリアはお金の管理をお願いして良いかな?ほら、君は頭が良いし」
「あぁ、そのくらいなら簡単だし負担にもならないな。やはり俺が料理を…」
「却下!俺らを殺す気かテメェは!」
「殺すとしても君だけだな、ハレルヤ」
「ンだと!?」
「もう、二人とも止めようよ…」
ティエリアがマイスター中料理が一番下手らしいですので。