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 気づいたら、そこは廊下ではなかった。
 倉庫、あるいは物置。そう呼ぶのが相応しいような小部屋に、アレルヤと刹那は立っていた。ちなみに言うと扉を開いた記憶もなければ、部屋に足を踏み入れた記憶もない。

 あまりにも突然に、目の前に風景は開けた。
 そこに当たり前に存在していたように。

「ここは……どこだ?」
「庵……」
「……?」

 アレルヤは思わず呟いた。この場所の空気は酷く覚えがあり、つい先日にも新しい部屋と入り口を見つけたばかりの空間の、一つ。そこにあるけど、とある存在を除けば入ることは出来ない、そんな場所。だから『いつの間にか』というのも納得できる。きっと、入り口を見落としているだけだ。

 不思議そうにこちらを見上げていた刹那だったが、すぐに何たるかを思い出したらしい。すいと視線を前方に戻した。

「王のみが入ることが出来る場所……庵」
「うん。刹那は記憶を見せたから知ってるよね」
「ここは…何の目的で」
「さぁ?分からないし、ちょっと探ってみる?」

 ぐるりと見渡せば山のように積まれた箱の山に、乱雑に置かれた色々な物。振り返れば普通の木製の扉。上を見れば染み一つない天井に一つの電球。床に目を落とせば板張りのフロア。横にだけ視線を向けると何の変哲もない壁。
 つまり、この庵は『物置』なのだろう。最初に感じたとおりに。

 とりあえず、とアレルヤは一つの木製の、人形でも入っていそうな箱を手に取った。紐で括られて閉じられている。少し重い。何かが入っているようだが……さて、開けて良いものか。もしも開けてはいけない代物だったらと思うと、少々怖いのだが。

「どうする?開けてみようか。危ないかも知れないけれど」
「俺は構わないが……いざとなったら逃げればいい」
「だね。刹那、扉の方はよろしく」
「了解した」

 ドアノブに手を掛ける刹那の傍まで箱を運び、アレルヤは慎重な手つきで紐を解く。
 拍子抜けするほどあっさりと解けた赤い紐を横に置いて、フタに手を掛けてゆっくりと持ち上げる。

 そこには刹那よりも小さな子供が入っていた。

「…………………えぇぇぇぇぇぇぇ!?子供っ!?」
「落ち着けアレルヤ。それは人形だ」
「え…?人形……?」

 冷静な刹那の言葉に落ち着きを取り戻し、改めて箱の中の少年に目を向ける。
 ……確かに、人形だ。継ぎ目もないしどこからどう見ても普通の子供に見えるが、それだけは見るだけで分かった。直感というわけではなく、その人形から漂う雰囲気がそれを知らせていた。

 背中に手を回して抱き上げてみると、腕と足はだらんと下がり、瞳は閉じられたまま。
 不思議な…人形だ。オレンジ色の髪は長く、首筋の辺りで一つに纏められている。後頭部から横に跳ねるように出ている髪は、先が下に垂れている感じ。腰から足にかけての長さを持つ布を巻いて、その上にベルトを斜めに着けている。それからノースリーブのタートルネックの黒い服は、よく見ると背中の上半分には布が無い。二の腕から指先にかけてには裾の方へ行くほど広がる袖を模った装飾品を付けていた。

「アレルヤ、ここに何か書いてある」
「あ……本当。えっと……kyr、s・・・」

 刹那に指摘されて見た右肩。そこに刻まれている文字は掠れて読み難い。
 どうしたらいいんだろうか……と思っている内に手が僅かに人形の唇に触れ。

 …人形の瞳が開いた。

 

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