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ふらり、ふらりと。
ぽつり、ぽつり
雨が降り出した
そんな中を、一人、フラフラと足元が覚束無い状態で歩く。
……変だ。さっきからずっと、こんな調子だなんて。
思いながらも、一人、歩く。
「変だろ絶対に……だって死神なのにさ…風邪なんて……」
フラフラとしている理由は、多分、風邪に掛かったからだろうとそう考えて、それなら直ぐに治るだろうと思って歩き出したのがつい先ほど。
けれど、症状は回復に向かうどころか悪化する一方である。
「変だって……」
風邪以外だったら、一体どうしてこんな状態になると言うのだろうか。……疲労?そんなまさか。歩き出してから時間はそんなに経っていない。
というわけで、やっぱり風邪だろう。ずっと濡れながら歩いているのだし、掛かる条件はちゃんとクリアしている……嫌なクリアだが。
ついには頭まで朦朧としてきて、あぁ、ヤバイかも知れないとさえ思わせたが、それでも足を止めることはない。動かし続け、進み続け、遠のき続け、離れ続ける。何より、速くどこかに行かないと、彼らが来てしまう気がしたから。
それだけはダメなのだ。何のために逃げ出したのかが分からなくなる。
暖かな場所は怖いから。壊れるんじゃないかと、壊れる瞬間や壊れた後に立ち会うことが多い自分は、そう思ってしまうから。
まだ、皆が消えてしまわないとか自分が大丈夫だとか、そう思えるほど強くもないから。
だから、歩き続ける。
「オレが一人いなくなっても……何とかなる、よな……アイツらだって、まさか料理の仕方が分からないとかは………」
……あるような気がする。
一気に心配が押し寄せてきて、歩きながらも安心できる要素を探してみた。
「ヘビーアームズあたりなら手先器用そうだし…大丈夫だろ……マグアナック隊もいるし、トールギスⅢも…………」
言いながら、良かったと安堵する。
出来そうなヒトがいて本当に良かった。もしもいなかったら、あの場所にまた戻らないといけない、という義務感に襲われること間違いなしなのだから。
妙なところで真面目な自分に苦笑しながら、はぁと息を吐く。
「うん…大丈夫だな……オレなんていなくても…」
一人くらい欠けたって、何の支障も問題もない。
一人欠けたら、欠けた後は少しくらいは喪失感を抱くかもしれない。けれど、それを過ぎれば残っているのは『いた』という過去だけ。時間は全てを押し流してくれるだろう。今はどうかは分からないけれど、時間が経てば何もなかったように日常に戻れるはずだ。
今まで見てきた殆どがそうだった。
それ以外の一部例外の様子は……酷かった。
残された者の中には発狂する者も、一生泣きはらして過ごすのであろう者もいた。一様に言えるのは、誰も彼もが哀しみにくれていたことくらいだ。
そんな人々を見る度に、それ以前の幸せだった時を壊したのが自分だと、そう思えてきてとても辛かった。何の資格があって壊したのだろうと、たとえ『仕事』であったとしても思ってしまうこともあるくらいに。
あぁ、だからこそ、だからこそだ。
「そーいうオレが……楽しくしてたら、いけないだろ…壊した張本人が楽しくしてるなんて……おかしいよなぁ…」
視界が霞んできたが、それでも構わず歩く、歩く。
倒れるにしても、一歩でも多く皆から離れる場所で。
じゃないと、皆が来る。
「やっぱ……家具壊したのは拙かったかもな…」
あんな事をされて黙っているメンバーでもないだろう。家具どころか部屋までボロボロに壊してしまったのだから…追われて見つかって怒られるのは自然の流れだ。
にしても全く……あんな事をしなければ、追われる理由も無かったかも知れないのに。それ以外に、こんな『死神』を追いかけてくる物好きなんていないだろうに。
けどまぁ、何だかそこにいたという事実だけでも怖くなったのは本当なので…。
その時。
「あ…れ……?」
グラリと、世界が揺れた気がした。
上手く足に力が入らず、意識はほとんど飛び気味で。
ゆっくりと意識が闇に飲まれていく中、前のめりに倒れていく体を、後ろから伸びた手が支えてくれたのを感じる。
それは、暖かな手だった。
支えてくれたのが誰かはお楽しみ。