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……昨日から、アレルヤと刹那の様子がおかしい。何だかコソコソとしているようだ。二人揃って、何か隠していることがあるらしかった。
別に一人で抱え込んでいるのでないのなら、構わないかとは思うが……。
「やっぱり気になる…」
「ん?……あぁ、アイツらな。昨日の昼間の館内散策から帰ってきてから妙だよな…」
「何があったのでしょう?」
話しかけてきたロックオンを見上げ、ソーマは意見を求めた。
うーんと唸りながら、狩人は自分の隣の席に腰掛けた。
「変な物でも見つけたかな……」
「なら何故、私たちに言わないのでしょう?」
「あまりに凄すぎて、リアクションに困ってるとか」
「それなら逆に話してきますよ」
特にアレルヤの方が。まぁ……危なくて話せない場合は言わないかも知れない。けれど刹那もいるのだ。彼なら手に負えない状況だったら直ぐに言ってくるだろう。
というわけで、どうして二人が黙っているのか分からないのだけど。
あの二人が揃うと、あらゆる意味で隠し事は無理な気がするのだが…。
などと考えて、そういえば昨日の吸血対象は誰だったのだろうと思う。ティエリアには怒っていたし(今日はもう許しているようだけど)、刹那はあんな調子で血を吸おうとは思わなかったはずだ、彼だし。だから二人とも対象から外すとして……となると残りは、狩人の彼だけだ。まさか外の皆に、ということはあるまいし。
「ロックオン、昨日アレルヤに血を吸われましたか?」
「俺か?いや……そんなことはなかったけど」
「…そうですか」
確認するために口を開けば、返ってきたのは否定の言葉。
……ということは、やっぱり刹那か。まさか吸ってないなんてことは無いだろうし……そんなことをしたら今頃衰弱状態だ。
もしかしたら、一日くらいは大丈夫なのかも知れない。ずっと吸わなくても大丈夫なのかも知れない……と最近、よくソーマは考える。そうしたところで命は落とさず、ただ魔族の血に呑まれてしまうだけなのではと。その結果どうなるかは分からないから、それもある意味では『死』なのかもしれないが。
試す気はない。本当に衰弱されたら心が痛くなりそうだし、何より今の彼が大好きなのだから。そんな彼の意思が反映されない変化は嫌だ。
つらつらとそう考えていると、そういえば、と隣でロックオンが呟いた。
チラリと見ることで聞き返すことに変えると、狩人は苦笑しながら言葉を続けた。
「都に行くって話、あれ、いつだ?」
「明日だと聞いていますが」
「えぇぇぇぇ!?明日!?」
そして答えたソーマの言葉に返ってきたのはロックオンの返事でなく、食堂入り口にいたアレルヤの叫び声だった。
驚いている自分たちの視線の先で、ワタワタと彼は慌てていた。
「どうしようどうしようどうしよう…明日?どこに隠したら……」
「アレルヤ、隠す……とは何ですか?」
「あ……」
しまった、という表情を浮かべて彼は……脱兎のごとく逃げ出した。
速い。扉の影に隠れるまでしか彼の姿は見えなかったが、それでも十分な速さだと分かるくらいに速かった。走り始めであの速さ……本気で走っている最中はどれほどの速さなのだろうか…見当も付かない。
一瞬だけ唖然としていたが、はっと我に返る。
それからソーマとロックオンは顔を見合わせて頷き合い、素速く立ち上がって後を追うべく走り出した。
追いつけるとは到底思えなかったが、行き先が分かれば疑問が氷解するかも知れない。
それならば努力はしてみよう。モヤモヤしたままは気に入らないのだ。